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――――約10年前


美瑠がイタリアに帰って1年。

毎日電話はしているけど…隣に誰もいないのが…いや美瑠が隣にいないのが寂しくて。
何度イタリアに行こうかと…うん、推定一万回くらい思った。


でもそのたびに美瑠が嬉しいこと言ってくれてさ……

それだけで心が満たされて、ここにいようと思わされる。


……美瑠の計算かな?


(あ、それはなさそう)



今日も美瑠からの電話を待ちながら狩りをする。

イライラするよ、咬み殺しがいがなくて。
美瑠や赤ん坊なら、もっと楽しめるのに。

そう思いつつトンファーを奮う。


そういえば今日は一度も美瑠から電話もメールもこない。

はぁ…美瑠の声が聞きたい……


もう重症だな、僕。

でもしょうがないでしょ?

ずっと…美瑠を抱き締めても、キスもしてないんだからさ。



「死んどいてよ」

「くっそぉぉっ!」



はぁ…まだ刃向かってくるわけ?

いい加減飽きてくる。

赤ん坊と遊びたいな。


バァァァンッッ!!!!



「ぐっ」

「!?」



カランっと草食動物の持っていたバットが落ちる。

今の銃声…あのバットに当てるなんて……


ニヤリと口の端が上がる。


面白いヤツが来た……


カツンッとヒールの音が響く。

硝煙の匂いさえ僕の興奮を引き立たせる。
コツリと最後の音を立てて、暗闇から現れたのは……

黒スーツに身を包んだ、小柄の髪の長い……女、の子……


え、うそ…僕、幻覚でも見てるのかな……


会いたいって気持ちが強すぎて―――



「ちゃお、恭弥!」



夢じゃなかった。



「美瑠…?美瑠、なの…?」

「うん!帰ってきたんだ。ただいま…恭弥」



微笑む雰囲気、笑顔も全部……

僕の大切な人のもの。



「……っ」



トンファーを落として、思いっきり美瑠を抱き締める。

強く、存在を確かめるように…強く。

美瑠は何も言わずに抱き締め返してくれた。


きっと…言葉なんて、必要ないから。
心から安らげるような…力が抜けていく感覚。



「会いたかったよ、恭弥」



それは僕のセリフ。
会いたくて、会いたくて、会いたくて、仕方なかった。

でも言えないのはプライドとかそういうものが邪魔するから。

そして美瑠にはそれがわかってるんだろう。



「ふふっ」

「…どうしたの?」

「ん。こうやって抱き締められるのが久しぶりで、幸せって思ったから」



……っ…ヤバイ…今のはキた……

久しぶりの美瑠の天然に照れちゃうんだけど……



「…美瑠」

「ん?」



抱き締めたまま、唇を耳元に寄せて。

僕の精一杯の、気持ちを込めるよ。



「おかえり」



帰ってきてくれて、ありがとう。

ずっと、ずっと…待ってたよ。
美瑠が…並盛に帰ってくるのを。

体を離して少し微笑むと、美瑠も微笑み返してくれた。



「ただいま!」



また、僕の腕の中に飛び込んでくれた。

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