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「忠誠を、貴方に」

「……ありがとう」



それしか、言えなかった。

慣れている人ならもっと別の言葉が言えたかもしれない。9代目とか、そういう人なら。
でも、十代目にもなっていない、ついこの前まで一般人だったオレには浮かんだ言葉というのはたったそれだけで。

それでも美瑠ちゃんは十分だというように嬉しそうに笑ってオレの手を離した。
跪いたままだったことを思って、オレはそっと美瑠ちゃんの手を取って立ち上がらせる。

神聖な、静かな空間はまだ続いているからオレは何か言おうと口を開かけ、



「何してんだ、ダメツナ」

「痛ってーっ!!」



ゲシッという音がつきそうなくらいすごい勢いでリボーンに蹴り飛ばされる。

うん、今ので完全に神聖な空気とか吹き飛んだね!
本当、この最恐家庭教師は空気読まないよな!「空気読む?え、何それおいしいの?」状態だよな!

「だって空気読めないんだもん」とか言ってそうだ。

その空気読めない家庭教師、リボーンはちゃっかり美瑠ちゃんの前に着地した。
もちろん、嬉しそうなめったに見られない笑みを浮かべて。オレを蹴飛ばしたことも忘れてね!



「ちゃおっス、美瑠」

「ちゃお!リボーン」

「よく帰ったな」

「リボーン……ありがとう」



リボーンの優しげな声に美瑠ちゃんは少し目を潤ませて、嬉しそうに笑った。

そして美瑠ちゃんはリボーンを抱き上げて、


―――ちゅっ


……………。
頬にキスしたぁぁぁぁぁ!?

あ、いや、きっと美瑠ちゃんのことだから挨拶なんだろうけどっ!
確かイタリアでは頬にキスは挨拶だってコイツが言ってたけどっ!

ここは日本であって挨拶は「こんにちは」だけであったとしても握手かハグぐらいで、



「ツナも」



衝撃的なその光景に固まっていれば、ちゅっと頬に柔らかい感触。

……ツナも?ツナも…ツナも…お、オレも!?
ひっ、雲雀さんに殺される……!!

ていうか頬にキスされて最初に思ったことが雲雀さんに殺されるってどうなんだー!



「ただいま!」



頭を抱えていたオレと嬉しそうに笑うリボーンにそう言って美瑠ちゃんは笑った。
笑った美瑠ちゃんは一年前の美瑠ちゃんと同じ笑顔。

雰囲気も、見た目も大人っぽかったけど、笑顔だけは、あの頃と変わらない笑顔だった。



「おかえり!!」

「おかえり、美瑠」

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