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ツナとのデートの日、いつもより少しだけおしゃれをした自分が鏡の前に映る。
あの酔っぱらった日にデートの約束をしたことはしっかり覚えていた私は次の日頭を抱えたが(何やらしゃべりすぎてしまっていた。バドミントンのこととか。恥ずかしい…)とりあえず約束通りデートに行くことに。
…デート…デート。うわぁ…なんだかものすごくくすぐったい。だって一度もしたことないし。
どんなことをするのがデートなんだろう。おしゃべりして、ピクニックして、…それで?
一体何が目的でデートするんだろう。いや、目的とか考えている時点でデートの定義とは外れているような……
あぁもう、こういう時ばっかり理屈っぽくて嫌になる。無駄に頭が固い。
うーん、うーん、と一人で鏡の前で唸っていると(なんて不審)コンコン、とドアがノックされる。
誰が来たのだろうか、もしかしてツナだろうか。でもツナとはエントランスで集合予定のはず。
律儀なツナが迎えに来てくれたとか?…え、でもどんな顔して会えばいいの?
さらに頭を悩ませていると、返事のない私に先ほどよりも強いノックがたたかれる。
あああもう仕方ない、ツナならなるようになれ!違う人でありますように!
思い切ってドアを開けてみると、そこに立っていたのは、
「ちゃおっス、姫。…なんでそんな可愛い恰好してんだ?」
「……リボーン君……」
「おい、何落胆してんだ。ツナと思ったのか?」
「落胆じゃなくて、安心というか…」
「…?どういうことだ?」
「ええっと…とりあえず、立ち話もなんだから中に入って」
師匠であるリボーンくんは、相変わらずパリッとした黒スーツに身を包み、気配もなく部屋に入ってくる。
どうぞ、とソファーに勧めて、すぐにリボーンくん用のエスプレッソを淹れた。
もう手慣れてしまったエスプレッソをリボーンくんに渡して、私もその隣に座り込む。
まだまだツナとの約束の時間までは余裕があるし、大丈夫だろう。
優雅にくつろぎながらエスプレッソをおいしそうに啜るリボーンくんはしばらくコーヒーを楽しんでいたが、「…で?」と先ほどの質問の答えを促してくる。
「…実は今日、ツナとのデートなの」
「おい、時間は大丈夫なのか?」
「うん。早めに準備していたから。…ねぇ、デートって何するのが一般的なの?」
「一般的?」
「…デートとか…したことないから…」
この年にもなってデート初心者であることを伝えるのが恥ずかしくて、ついつい小声になってしまう。
するとリボーンくんは目を丸くした後、…なぜかおでこに手をあててうつむいたまま動かなくなる。
え、なにこれ、もしかして呆れられた?この年にもなってデートしたことないとかありえないとか。
わかってるよ、そんなこと。だから恥ずかしくてあんまり言いたくなかったのに……
「お前…本当不意にかわいいよな…」
「え?」
「いや、何でもねぇ。…別にデートに一般的も特殊もないだろ。二人が楽しければ、何でもいいんだ」
「…二人が楽しければ、いい…」
「そういうもんだろ」
かっこいい格言を残して、リボーンくんは再びエスプレッソを啜る。
…二人が楽しければ、どこで何をしようとデートになるのか……
そっか、と納得しながら再びコーヒーを飲むとリボーンくんは満足したのか(どうやらコーヒーだけ飲みに来たらしい)腰をあげる。
「気を付けて行けよ」
「うん、ありがとう」
時計を見上げればちょうどいい時間。鏡を再び見つめて、どこも変なところがないか確認するとエントランスへと向かう。
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