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「ねぇ、君財団に来ないかい?」
「…まさかのお誘いに驚きです」
「それ、驚いてるの?」
「えぇ。かなり」
無表情ながら頷く彼女に小さく笑いをかみ殺す。
表情は全く変わっていないというのに彼女は淡々と「驚いている」という。
僕も「わかりづらい」と言われることが多いが、こんなにもわかりにくい人間は初めてだ。
「君、本当に面白いね」
「それもあまり言われないことですね」
「へぇ、君の周りは君の面白さに気付いてないわけ?」
「……」
僕の言葉に彼女は何故かまじまじと僕の顔を見つめる。
初めて見せる彼女の好奇心のような表情にちょっとは無表情を崩せたようでうれしくなる。
その嬉しさからか普段ならこんなにまじまじ見られるとイラッとするはずなのに、むしろ気分はいい。
何?と聞くと彼女は目線を下げて「いつになく饒舌ですね」と呟いた。
…饒舌?僕が?…あぁそういえば彼女との会話が楽しくってついつい話し過ぎていたような気がする。
…、…楽しい…僕が、楽しいと思ったのか。女子との会話に?
そう思うと不思議な気持ちになって、思わず口をつぐんでしまっていた。
そうしている間に僕たちは沢田の執務室の前に立っていて、佐藤は執務室のドアをノックしていた。
「ボス、雲雀さんがお見えです」
「入って」
「はい。…どうぞ、雲雀さん」
がちゃり、とドアを開けられて考えていたことを慌てて切り替える。
今回は報告だけだ。さっさと帰るに限る。…佐藤と話すのは、悪くないけど。
中に入ると沢田が穏やかな笑みを浮かべて僕を迎え入れる。
佐藤は隣の給湯室へ入るとお茶を淹れる気配がした。…ま、そんなの飲む前に帰るけどね。
ターゲットは死亡、以上。
それだけ伝えると踵を返したが「お茶、していきませんか」と佐藤に声をかけられた。
「…沢田とお茶?冗談かい?群れる気はないよ」
「失礼しました」
「まぁまぁ雲雀さん。せっかく姫が用意してくれたんだし、お茶飲みません?」
「生意気だよ、沢田綱吉」
「はは…すいません」
ぎろりと睨めば沢田は困ったように笑って肩をすくめた。
佐藤も強く勧める気はないのか、それ以上は何も言うことはない。
そのまま部屋を出ようとしたが、先ほど考えたことを深く考えずに口に出していた。
「そうだ、沢田。佐藤を財団に移す気はないかい?」
「…っ、そ、れは…っ」
「…?何、どうしたの?」
ガタンッという音を立てて沢田が立ち上がったのを見て、僕は少しだけ眉を顰める。
いくら彼女とはいえ、こんなにも動揺することはないはずだ。
ましてや仕事の話。私情を挟むことはないはずなのだ。
沢田は自分の反応が過剰な反応だと気づいたのか、小さく息をついてぎこちない笑みを浮かべた。
「ダメですよ。姫は優秀ですから。いなくなったらオレ、困ります」
「…ま、気が向いたら考えてよ」
これ以上深く話すつもりもなかったので、さっさと部屋を出ていく。
沢田の過剰な反応を少しだけ不思議に思いながら。
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