37.1



今日は珍しくツナが会食に付き合わなくていいと言い出し、お休みになった。

こんなこと初めてかもしれないな、なんて考えながら休憩室に入る。
いくらお休みを頂いたといえど、不測の事態がないとは言えない。
もし、すぐに来てほしいと言われたらすぐに行けるようにスーツ姿のまま、休憩室で休むことにした。

メイドさんにお茶を淹れてもらい、朝もらったケーキをいただく。
自分の好みにあった甘酸っぱいラズベリーのケーキに自然と頬が緩んだ。



「…休憩中かい?佐藤」

「あ…雲雀さん」



上司にあたる恭弥が現れたことで、自然と体は立ち上がっていた。
いい、とばかりに手で制する恭弥に甘えて再び腰を下ろすと「休憩をいただけまして」と答えた。

メイドさんが恭弥に何を飲むか聞きに来ると私に視線を向けた。



「そのケーキ、まだあるかい?」

「えぇ、ありますが…」

「じゃあ紅茶と同じケーキ、用意して」

「かしこまりました」



ゆっくり頭を下げて、メイドが下がっていくと恭弥の視線が再び私に向けられる。

…最近、恭弥と会うことが多い気がするのは気のせいだろうか。
恭弥がこのボンゴレに来ることは滅多にない。
基本的に財団にいて、もし用事があっても「財団に来い」と呼び出すほどだ。

その恭弥がボンゴレに来るのだからよほどの用事があるのだろう。…最近、何かあっただろうかと頭の中で任務のことを思い返したが該当しそうなものはなかった。



「最近、よく来られますね」

「…まぁね」

「何かトラブルでも?それとも重要な任務が?」

「いや、別に」

「…そうですか」

「何。用がなければ来ちゃいけないわけ?」

「いえ。そうではありません。…ただ、珍しく……
雲雀さんが来てくれることが嬉しくて、…その理由を知りたいだけかもしれません」



大したことではない、ということが言いたくてそう伝えたが、言い方がよくなかったかもしれない。

嬉しいからその理由が知りたいなんて……まるで独占欲だ。
そう考えたら急に恥ずかしくなって、恭弥から視線を外し、カップに手を伸ばす。

照れ隠しに紅茶を飲めば、少しだけ心が落ち着いて恐る恐る恭弥へと視線を戻した。
一体どんな顔をしているのか…嫌がっているだろうか。それとも、驚いているだろうか。

ドキドキしながら恭弥を見れば、――予想外の表情。


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