38.3
ボンゴレに着くと、まずは本来の目的である執務室へと向かう。
途中山本武や獄寺隼人に会い「珍しいな」と言われるのを鬱陶しく思いつつも、歩を進める。
執務室の前に着くと、ノックするのも煩わしく、ドアをあけ放つと沢田綱吉が驚きながら顔を上げた。
そして、その隣で書類の説明していたであろう佐藤も。
「任務は終了。詳しい報告書は草壁が持ってくるから」
「早かったですね、雲雀さん。三日はかかると思ったのに…」
「あんなのに三日もかからないよ」
「さすが雲雀さん」
「君に褒められても嬉しくないね」
「はは…すいません」
苦笑する沢田は相変わらずで、一瞥だけすると佐藤へと目を向ける。
報告する僕を見ていたのか、バチリと目が合い、少しだけドキリとしたが何もなかったかのようにケーキを差し出した。
「これ、差し入れ」
「え…あ、ありがとうございます。いただきます」
「雲雀さんが差し入れだなんて珍しいですね」
「君のとこの秘書は君にいつも苦労させられているみたいだからね」
「耳が痛いです…」
「そんなことありませんよ、ボス。…よかったら雲雀さんも一緒に食べませんか?」
「…いや、遠慮するよ。あと、これ」
胸ポケットから先ほど財団から持ってきた本を取り出す。
佐藤は最初報告書か証拠品かと思ったようで、首を傾げていたが「前に言ったおすすめの本」と付け加えると目を輝かせた。
…と、いってもほんの僅かだけ目に喜びの色が浮かんだだけなのだが。
「面白いよ。読んでみて」
「ありがとうございます…!私、この作者さんが好きで…」
「へぇ、奇遇だね。僕もだ」
「本当ですか?ふふ、嬉しいです」
どんな本だろう、と興味津々で、今すぐにでも読みたいと顔に書いているが仕事中だというストッパーがあるのか本を開くことはない。
でも、佐藤が笑みを浮かべるのはとても珍しい。
この笑顔が見れただけ収穫とするか、と僕は自然と彼女の頭を撫でていた。
佐藤は驚いたように僕を見上げたが、…その目にはどこか悲しそうな…切なそうな、何とも言えない感情が浮かんでいた。
久しぶりに見た佐藤の複雑な感情に僕は初めて戸惑った。
…佐藤は、時々…僕を見る目が変わる。
それはふとした瞬間なのだが、悲しそうで、切なそうで、懐かしそうで、…泣きそうな目で僕を見る。
どうしてそんな表情をするんだ、と聞きたい衝動に駆られるが、佐藤はその後必ずと言っていいほど絶望に似た自嘲を浮かべるから何も言い出せずにいた。
「…っ雲雀さん!!」
「……、…何」
「あ……、…いや、あの、」
「……男の嫉妬は醜いよ、沢田綱吉」
「なっ…!ち、違いますっ!…っ、違わないけど、…って、あぁもう…!」
「ボス、落ち着いてください」
「なんで中心人物である姫が一番に冷静を取り戻してんだよ!」
「ツナの動揺っぷりを見てたら、何となく」
どうやら沢田の慌てっぷりを見ていたら落ち着いたようで、佐藤は再び無表情に戻っていた。
沢田は小さくため息をついて、くしゃりと自分の髪の毛を掴んだ。
何故か自身の行動を悔い始めているのだろう。
かっこ悪…と小さく呟いた沢田に佐藤はそっと寄り添い「ありがとう、ツナ」と聞いたことのない優しい声音で沢田の背中をさすった。
――その瞬間、僕の中に燃え上がったのは、焦がれるような感情だった。
これ以上二人の絆を…想い合った二人を見ていたくなくて、僕はすぐに背中を向けた。
どうしようもなく苛ついて今すぐにでも暴れたくなった。…でも、今この場ではその姿を絶対に見せたくなくって、荒々しく部屋を出ていく。
何なんだ…何なんだよ…っこの感情は…ッ!!!
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