39.2
「…悲しませた、よね」
書類に目を落としながら先ほどのことを思い出す。
恭弥と話す私を見ると、ツナはいつも何でもないような顔をしていた。
でも、今日は違った。
恭弥と話す私に嫉妬して、…不安だったのか、涙を零していた。
ツナの気持ちに気付いていながらも大丈夫?としか声をかけられない自分が嫌になる。
こんな時に「大丈夫だよ、私はツナが大好きだよ」と言えればツナは安心したのかもしれない。
わかっていたのに…言えない私は本当に酷い奴だ。
落ち込んでいるとすぐに獄寺君の部屋の前に立っていて、あぁダメだと小さく息をつく。
このままでは仕事の話なんて到底できない。
今からは仕事の時間だ、と先ほどよりもゆっくり息を吐いて、前を見据えた。
大丈夫、ちゃんと仕事ができる。
心を落ち着けさせてコンコン、とノックし「姫です」と声をかけると「入れ」と中から聞こえてきた。
「書類、持ってきました」
「おう、サンキュー」
ちょうど休憩中だったのか、コーヒー片手に煙草をふかせていた獄寺君が椅子から立ち上がる。
重要なものは、と書類の話をしていたのだが、獄寺君からいつもの相槌がなくて不思議に思う。
いつもなら短くとも「あぁ」とか「おう」とか反応してくれるのに……
不安になってそっと獄寺君の方を見るとじっと私の方を見つめていてどきりとする。
思わず息を飲んだが、獄寺君は動揺することなく私を見つめ続けている。
「…ご、くでらくん…?」
「なんかあったか?」
「え…」
真っすぐ見つめられながら問いかけられた内容に「この人はわかっているのでは」と再びどきりとする。
私は無表情のことが多いし、先ほども心を落ち着かせて入ってきたつもりだった。
「なんで、」と掠れた声で聞けば、獄寺君はがしがしと頭をかきながら少しだけ目線をあげた。
「あー…よくわかんねぇけど、まぁ、何となくな」
「……そっか」
何となくそれ以上話すことができなくて「心配かけてごめん。大丈夫」としか言えなかった。
獄寺君は少しだけ不満そうな顔をしたけど小さくため息をつくと「無理すんな」と温かい言葉をかけてくれた。
何も話さない私に対して怒りもせず、押しつけがましくもせず、ただ心から心配してくれた獄寺君に心から感謝した。
ありがとう、とだけ伝えて私は書類を渡すと部屋から出ていこうとした。
けど、
「おい」
「…なに?」
「…、…気持ちにだけは嘘をつくなよ」
お前が気持ちに嘘をつけばつくほど、十代目は悲しむ。
獄寺君が絞り出したように言った言葉に私は息を飲んでいた。
獄寺君の言ったことは、どこまでも的を得ていたから。
…そうだよ、ね……でも、それ以上にツナから離れてしまったら……ツナは、
私はその言葉には何も答えずに、部屋から静かに出て行った。
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