40.1
あれからしばらく恭弥はボンゴレを訪ねてくることはなかった。
そんな時、恭弥宛の書類ができて思わずその書類を見つめる。
…書類を渡すだけなら他の人に頼むことだってできる。
恭弥は少し離れた財団にいるのだからこちらに定期報告に来る草壁君に任せることだって可能だ。
だけど、…どうしてかこの間のことが気になってきゅっとその書類を握り締める。
「…姫、その任命書雲雀さんへ?」
「…、…はい」
「急ぎだったよね……姫、届けてくれる?」
「え…私、が?」
「うん、重要書類だしね。すぐ行ってきて」
「は、い…わかりました。少々、行ってきます」
軽く頭を下げて部屋を出ていったが、今さらながら少しだけ躊躇う。
…このまま恭弥のところに行ってもいいのか……ツナを不安にさせてしまうのでは…?
でも、これは仕事。…私ができることは、できるだけ早く帰ることだ。
よし、と気合いを入れて私は歩き出し、車をまわして風紀財団へと向かう。
セキュリティを解除し、中へ入っていくと昔から風紀にいた人たちが「おぉ姫!」と話しかけてくれる。
お久しぶりです!と挨拶を返しながら中へ入っていくと恭弥の執務室が見えてくる。
少しだけ緊張したが、小さく息を吐いて気持ちを整えるとノックする。
「誰」
「失礼します、佐藤姫です」
「…、…入れば」
「失礼します」
許可が出て、ゆっくりとその襖を開ければ広々とした部屋にぽつりと恭弥が座っていた。
机の上にはお茶と数枚の書類が乗っていて、恭弥はゆったりとその書類に目を通している。
静かに入ると恭弥から少し離れたところに座ると「ご無沙汰しております」と声をかけた。
「何の用だい?」
「急な任務についていただきたく参りました」
「…内容は」
「ドリーヌファミリーへの潜入。証拠をつかみ次第殲滅です」
「……ふぅん」
「詳細はここに」
目を向けられて私は立ち上がるとすぐに恭弥に書類を手渡す。
恭弥はその書類にすぐに目を通すとしばらく黙り込んで考え込んでいるようだった。
しかし、すぐに決断したのかスッと顔をあげて私を射抜いた。
「わかった。期限は?」
「1カ月。それ以上かかるようであれば証拠不十分で他の者に長期任務で潜入させるそうです」
「沢田に2週間でいいって伝えて」
「承知しました」
頭を下げて退出しようとすると「待ちなよ」と声をかけられる。
躊躇いつつも振り向くと恭弥は何かを迷っているように黙り込んでしまう。
こういう時に恭弥が何か言うまで待つ方がいいことを知っている私も自然と黙り込む。
しばらくは沈黙が続いたが、恭弥は一つ息をついた。
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