40.2
「茶」
「え…?」
「茶、淹れて」
「あ…はい。どちらで淹れられますか?」
「この奥」
「わかりました。お借りします」
どうしていきなりお茶を飲みたくなったのか。
少しだけ不思議に思いながらも給湯室に入り、あった茶葉に小さく笑みを浮かべる。
あぁやはり恭弥の好きな銘柄は変わらない。
ならば淹れ方は一緒。久しぶりに淹れるお茶から立ち込める香りにホッとする。
淹れ終わるとお盆に乗せてゆっくり恭弥の部屋へ再び戻る。
恭弥は私が傍に座ると本から顔を上げて、視線をお茶へと向ける。
どうぞ、と置くと恭弥は湯呑をゆっくり持ち上げて、口元へ運ぶ。
一瞬、手が止まったが、ゆっくりと口をつけた。
「…、……ねぇ」
「はい」
「君、……(この味…香り…どこかで…、…いや、ありえない…)」
「…?」
「…いや、何でもない」
そのあとは黙々と飲んでいた恭弥だったが、顰める眉は変わらない。
まさか誤魔化されるとは思っていなかったので、私もそれ以上聞くことはできなかった。
「おいしかったよ。…また、淹れにきて」
「え…あ、はい。機会があれば是非」
「…それと…今度由里の誕生日があるんだ。そのプレゼント選びについてきてくれない?」
「…私が、ですか?」
ずきり、と胸が痛み、思わず言葉を濁してしまった。
由里への贈り物を一緒に選ぶ…そんなこと、私が由里の幸せを願ってできるだろうか。
…いや、どう考えても私にはできない。恭弥がどんな優しい顔をしてどんな幸せそうな顔をして渡すのか想像してしまったら……
「…もし、お時間が合えば」
「合わせるよ」
また相談させてと言ってお茶をすする恭弥に今度こそ頭を下げて部屋を出ていく。
これ以上は一緒にいることはできなかった。
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