5.2
それにしたってこんなにのんびり走っていたら遅刻してしまうんじゃないかな。
私は遅刻したって恭弥にお仕置きと言う名の罰ゲームさせられるだけで、実際に咬み殺されることはない。
けど、ツナは違うだろう。
恐らくあの恭弥のトンファーの餌食になるに違いない。
でもツナはこのペースでも結構きつそうに走っているからもっとペースあげろなんて言えないし…さて、どうしたものかな。
密かに心の中で困っていると「ちゃおっス」という可愛らしい声が聞こえてきて少しだけあたりに目を配る。
気配に敏感な恭弥の近くにいたせいか私も人の気配に敏感な部分がある。
けれどさっきの声の持ち主はまったく私に人の気配を感じさせないまま私に声をかけた。
…一体何者?
警戒心だけが積もって声のした方向…何故か壁があるところなんだけれど、そこに目を移すと…
「…二足歩行の赤ん坊?」
なんだか現実にはありえない赤ん坊がそこにいた。
黒いヴォルサーノに、黒スーツ、それに似つかわしくない黄色のおしゃぶり、くるんっと巻かれたもみあげに、…どこか違和感をぬぐえない、赤ん坊。
ニヒルな笑みを浮かべながら「お前が佐藤姫か」と真っ黒の瞳を向けてくる彼に「誰?」と問いかけた。
知らぬ間に自分の名前が知られていることほど、怪しいものはない。
それに先ほどから感じる違和感にどうしても警戒心が解けてくれない。…なんだろう、まるで“本当の彼”が別にいて、今見ている姿は仮の姿のような……自分で言っていて意味わかんないんだけど。
思わず少しだけ眉を顰めていると赤ん坊は何故かとても楽しそうに笑って、なるほどな、と呟いた。
そんな彼をツナは知った顔だったようで、慌てたように彼の名前を呼んでいた。
「リボーン!何でここに、」
「姫、気に入ったぞ。ボンゴレファミリーに入れ」
「んなっ!?おい、姫まで巻き込むなよ!!」
「うるせぇ」
「っ、いってー!!」
おぉ、なんてきれいな蹴りがツナの頬にクリーンヒットしたんだろう。
どこか感心したように見つめながら先ほどリボーン(で、あっているのかな)が言っていた言葉をしっかり考える。
ボンゴレファミリーに入れ。彼はそう言ったはず。
ボンゴレ…イタリア語で貝とか、あさりとか意味する言葉で、ファミリーは英語で家族。…アサリ家族に入れ?どういうこと?
あいにく貝ならアサリよりホタテのほうが好きなのだけれど……
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