10.1



教室に戻ると「じゃあね!」と笑って離れていく由里に少しだけホッとしながら何もなかったように自分の席に戻る。
授業が始まると先生が私を見て驚いていたが特にお咎めもなく。
いつものように授業が始まり、私はノートもとらずにぼぉっとその説明を聞いているとふいに恭弥との昔の記憶が思い出された。

それは、そう…恭弥が初めて私の前で喧嘩したこと。

あの時の私たちの関係は馴染みの公園で本を読んだり、昼寝したり、時々おしゃべりしたり、とただの友達だった。
小学校には行っていたから時々勉強とかもしたりして、学年は違えどその関係性は変わらなかった。
まだ親友とは呼べなかったかもしれないけど、私は少なくても恭弥を大切に思っていたし、恐らく恭弥も私のことを大切に思ってくれていたのではないかと思う。


あの日は確か……お昼から突然の雨が降った日だった。


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