14.1



あなたに心を奪われたのは、桜が舞う季節だった。






―由里story−






小学校を卒業して、私はそれを機に並盛中学校へと入学することになった。
父親の転勤がちょうど4月にあり、私は住みなれた土地を離れて並盛に来たのだった。
正直小学校まで仲良かった子たちと離れるのは辛かったし、そのまま残りたい気持ちもあったが親と離れて住むことなんて中学生ができるはずもなく、並中に入学することになった。

初めての転校、初めての土地…全てが慣れていなくて、私は不安な気持ちでいっぱいだった。
聞くところによると並盛中学校は並盛小学校の子たちがほとんど変わらずにあがる学校らしい。

小学校から一緒な子達の間に私は入っていけるのだろうか……
友達できるのかな。いじめとかあったらどうしよう。

そんな不安の中、入学式を迎えて私は着慣れない制服を着て並盛中学校へ向かった。
母と父は共働きで、入学式には都合が合わず二人とも来ないといっていた。
それは仕方ないことだし、心配する両親をなだめて一人で並盛中学校を目指したのだったが……



「…どこ、ここ」



知らない土地で、まだ覚え切れていない道を通っていたからか途中でわからなくなってしまった。

両親がかいてくれた地図を頼りに来ていたのだが…完全に迷子。

通り過ぎる人達は私なんていないみたいに通り過ぎていって、その冷たさに私はもはや心細さで泣きそうだった。
帰りたい。あの見慣れた町に帰りたい。
そんな思いが心を支配したがどうすることもできず、その場に立ち竦んでいると「何してるの」と声をかけられた。
びっくりして顔をあげるとすっごくかっこいい学ランの男の子が鋭いまなざしをこちらに向けながら立っていた。


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