15.3
自分の部屋に戻り、私はあまり使わない白い携帯を取り出す。
この携帯は恭弥が私に「持ってないと不便だから」って言ってくれたものだ。
当然のように携帯のメモリには恭弥と自分の家、学校くらいしか入っていない。
それで困ったことはないので手馴れたように恭弥の携帯に電話をかけてみる。
3コールくらいで「もしもし」という恭弥の優しい声。
「突然ごめん」
「いいよ。どうしたの?珍しいね」
「…実は、明日から一週間…いないことを伝えようと思って」
「……どういうこと?」
途端に不機嫌になった恭弥にさきほど母から言われたことをそのまま伝える。
母がアメリカに行くのでその準備を手伝うためにアメリカに一週間行くこと。
もちろん自分はアメリカについてはいかず、並盛に一人暮らしすることにしたことも。
話を黙って聞いていた恭弥は私が話し終わった後も少しだけ黙っていた。
私もこれ以上何もいえなかったのでそのまま沈黙を保っていると、珍しく小さな声が聞こえた。
「…いいの?」
「え…」
「姫は、いいの?お母さんについていかなくて」
いまさら僕が首をつっこむことじゃないのはわかってるけど。
そう付け加えられて私は軽く唇を噛みながらも「いいの…」と返した。
母にはすごく悪いが、母と恭弥を天秤にかけたとき…大切にしたいと思ったのが恭弥だった。
お腹を痛めて生んでくれた実の母に本当に薄情だと言われても仕方ないと思うが、私の正直な気持ちはそうだった。
「恭弥と離れる方が、嫌」
「……そう」
哀しさと嬉しさ、複雑さを含んだ声だった。
一週間、気をつけてね、と言われて恭弥もね、と返してから私は電話を切った。
これ以上恭弥と話していたら何か他のことまで言ってしまいそうだったから……
沈みそうな心を叱咤して私はクローゼットの奥に仕舞っていたスーツケースを取り出して服を詰め込む。
出発は明日。一週間分の服は、予想以上に多く感じた。
(初めて恭弥と一週間も離れる)
- 50 -
*前次#
ページ:
back
ALICE+