17.1
姫がアメリカに行って4日が経った。
一週間の期限付きだからこんなにも冷静にいられるのだが、やはりいつもいる存在がいないというのは少し寂しく感じるようで。
早く帰ってきなよ、と小さく誰に言うでもなく呟くと応接室から出て行く。
今日は仕事もすぐに終わることができたし、天気も悪いから早く帰ろうと思ったのだ。
最後に学校の見回りを終えて、学校から出て行くとしゃらり、となぜか僕のブレスレットがきれいな音を立てた。
視線を向けたがブレスレットが言葉を発するわけでもなく、ただ控えめな光沢を放っていた。
「…姫」
君がいない日常はこんなにもモノクロ。
何をするにも姫を思い出してしまっていいことなんて全然ない。草壁が淹れるお茶はやっぱりまずいし。
早く姫が淹れてくれるお茶が飲みたい。早くあの穏やかな空気をまとって僕の側にずっといてほしい。
そんな感情があふれて、僕は唯一姫とのつながりを感じられるブレスレットに軽く唇を落とすと商店街のほうへ歩いていく。
人通りと車の通りが多くなるこの時間帯にここを歩くのは群れが嫌でも目に入ってあまり好まないのだが見回りのためなら仕方ない。
風紀を乱すようなバカがいないことを確認しながら歩いていくと小さな女の子がふとした瞬間に目に入る。
…なんだか、あの子…小さい頃の姫に似てるな……まぁあの子は子どもながらの無邪気な笑顔ができるみたいだけど。
親に何かをかって貰ったのだろう。その子は嬉しそうに走り回っていた。
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