18.4
心配しました、と哀しそうに微笑む彼女になんて返せばよいのかわからずただ黙っているとすぐに白衣を着た男が入ってきた。
その男はあの女子に一度病室から出るようにいうと自分が医者であることを名乗り、色々なことを聞いてきた。
ここはどこか、とか自分の名前を覚えているか、とか簡単な計算はできるか、とか。
何でそんなこと聞くのかはわからなかったが全てに答えることができると「では、」と質問を変えられる。
「さっきのお嬢さんのことは覚えてらっしゃいますか?」
「さっきの子…?」
「そうです」
「……いや」
「…!では、あなたのお母様のお顔は思い出せますか?」
母親の顔…?
……あぁうん、嫌でも僕とそっくりだから思い出せるに決まっている。
唯一似ていないところといえばこの鋭い目くらいだ。母親はどちらかというと垂れ目だから。
思い出せる、と頷くと目の前の男は悲しそうに目を伏せた。…何その反応。
もしかしてあの子は、そんなに僕にとって大切な子だったの…?
そういえばさっき、誰か大切な子を忘れているような気がしていた。
いつも一緒にいて、誰よりも守りたいと思った女の子が……もしかして、あの子が、そうなの?
…わからない。わからないけれど、それを聞いたらあの子はきっと悲しむだろう。
あの子が悲しむのは…見たくない、な。
色々と話しかけてきた医者を無視しながら僕の意識はすべてさっきの女の子に向けられる。
名前はなんていうのか、一体僕にとってどういう存在なのか、…僕はどうやって君に接してきたのか。
思い出したいけれど、思い出せない。
―――あの子と話せば、思い出せるのかな…?
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