3.2
「お腹すいた」
「…今日のお弁当、自信作だよ」
「ワォ、期待してる」
まぁ、姫の作るお弁当は絶対おいしいってわかってるけどね。
そう小さく笑いながら呟いた恭弥に私の心拍数は少しだけ上がってしまう。
どきどき、と高鳴る鼓動を必死に押し隠してお得意のポーカーフェイスを崩さず頑張って作ったお弁当をバックから取り出して教室から出る。
…中学校になって毎日恭弥のお弁当を作るようになった。
最初は自分の分だけ作っていて、恭弥は草壁さんが用意した市販のお弁当を持って、一緒に食べていたんだけど、ある日私のお弁当から卵焼きをひょいっととられて、一言。
『おいしい』
そのときから私は恭弥の分のお弁当まで作るようになって、現在私の料理の腕は右上がりに上昇している。
応接室には本来の応接のためなのか給湯室が隣に設置されていて今は恭弥専用の給湯室となっている。
彼お気に入りの茶葉を出してゆっくりと丁寧にお茶を淹れてからテーブルに持っていくと待ちきれなかったのかお弁当をすでに広げられていた。
そこにしっかり入っていたはずの卵焼きが一つなくなっていて、恭弥が少し口をもぐもぐしていることから容易につまみ食いしたことがわかる。
お行儀悪いよ、と少し呆れながら注意すると「やっぱりおいしい」なんて注意の言葉もまるっきり無視のお言葉。
しかもおいしいだなんて褒め言葉を口にするあたりやっぱり恭弥は侮れない。…ほれた弱みというものかしら。
「…あ」
「どうしたの?恭弥」
「いや…(そういえば、)」
何かに気づいたように思わず声をあげた恭弥にどうしたのだろう、と首を傾げたが恭弥は詳しいことを何も言わず。
少しだけ深く考え出した恭弥に私はただ首を傾げるばかりだった。
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