22.1



夏祭りが終わって、少しだけ気まずかったけど姫はあれから俺との距離が縮まったように思う。
学校に行ってたわいのない話をしたり、お昼ご飯を一緒に食べたり、一段と楽しくなった。

…けど、俺の中に未だ疑問として残っているのは姫と雲雀さんに何があったのか。

喧嘩?…いや、それならもう仲直りしてもいいはずだし、由里が隣にいる意味がわからなくなる。
それに雲雀さんは姫がアメリカから帰ってきてから一度も姫の名前を呼んでいない。

姫の代わりに由里ばかり……まるで姫と由里が入れ替わったみたいに。

いったいどうなってんだろうな、と内心首をかしげながら廊下を歩いていると前から由里が歩いてきていた。

…そうだ、雲雀さんと姫の間に何があったのか、変化の中に組み込まれている由里も知ってるんじゃ…!



「由里!」

「…ツナ」

「あのさっ、ちょっとだけいいかな?」



由里は少しだけ迷ったように黙り込んだが結局「うん」とうなずいてくれた。
ここではなんだから、ということで屋上に行って由里と対峙する。
少しだけ風が強かったけど、お互い何を言えばいいのかわらかなくて、呼び出しといてなんだけど俺もなんて言い出せばいいのかわからなかった。


“姫と雲雀さんの間に何があったか知ってる?”


そんなこと当事者じゃないかもしれないのに聞いたら変に思うかな。

あー!もうちょっと考えてから声かけろよ、俺!
でも、仕方ない!もうここまで来たら一気に聞いてみよう!



「由里、姫と雲雀さんって…なんかあったの?」

「………」

「だってさ、姫と雲雀さんあんなに仲良かったのに今は一緒にいないし!いるのは由里だからさ!だから、由里なら何か知ってるかなーとか思ったりしたんだ、けど……」



どうかな、と最後の方はあまりの自信のなさに声がしぼんでしまったけど、言いたいことは全部聞いた。
由里は少しだけやっぱり迷ったように目線をさまよわせている。
そのしぐさにやっぱり由里は何か知っているのだと直感が告げる。

逡巡している由里を急かさず、ただ俺は黙ってその決断の時を待っていた。

…どれくらいの時間が経ったかわからないけれど、俺には長い時間が経ったような気がしてきたとき、由里がまっすぐ俺の目を見てきた。
その決断は俺に本当のことを言う決心をつけたのか、…ごまかすことにしたのかは、わからなかった。


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