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クリスマスパーティー当日。

ビアンキが張り切って料理を作っているのを真っ青になりながら見つつ、母さんが作ってくれているごちそうになんだか少しだけ感慨深くなる。

…来年のクリスマスは、母さんの料理食べて過ごすなんてできないんだろうな……

母さんをマフィアに巻き込まないという父さんやリボーンの考えが尊重されて母さんは何も知らない。
イタリアに行くというのも父さんの仕事を手伝うためだと言って行くつもりだ。
母さんは未だに父さんが石油を掘り当てる「泥の男」と信じて疑わないし…俺が父さんの仕事を手伝うということは俺も泥の男になるということで…母さんが「まぁ!」と言って嬉しそうに笑うのが少しだけ想像できた。

そんな俺の心情なんて知るはずのない母さんは「ツナ、早く支度しないとみんな来ちゃうわよ!」と口うるさく言ってくる。



「わかってるよ、もう」



なんていつものように反抗的な態度をとって、二階へと上がり、いつもより少しおしゃれな格好に着替えてみる。
と、言っても俺の“おしゃれ”なんてたかが知れているんだけど。

俺の部屋でするのを知っているからか、母さんはいつもより綺麗に俺の部屋を掃除してくれていて。
時計を見やればみんなが来る時間まであと1時間というところだった。

さっきリボーンがどこからか取り出してきたクリスマスツリーをどっかに置こうか、と考えた瞬間家のインターフォンが鳴り響く。

「はーい!」という母さんの声がして、ドアが開かれる音がしたあとすぐに「まぁ、こんにちは姫ちゃん!」という楽しげな声が聞こえたので俺は少しあわてて自分の部屋を出た。

聞き間違いじゃなければ、今姫ちゃんって言ったはず!

自分の思い人が思ったより早く来たことに驚きを隠せないがそれ以上に嬉しくて降りていくと白いコートに身を包んだ姫が小さな笑みを浮かべて母さんと話していた。



「早く来てお手伝いをと思ったのですが…遅かったようですね」

「そんなことないわっ!ありがとう、姫ちゃん!」

「何かまだお手伝いできることがありますか?」

「まだお料理が終わってないから手伝ってくれる?」

「もちろんです」



いつもより多弁な姫に少しびっくりして、…そしてほんのちょっといつもより可愛い姫に見とれて、ぽかん、としていると俺の存在に気付いた母さんが「ツッ君、どうしたの?」と声をかけてきたからようやく正気に戻る。

あぁ、いや、その、なんて言葉に詰まる俺に何かを察したのか妙にニヤニヤしはじめた母さん。

あぁもう絶対気付いたよ!めんどくさいことになる!



「ツッ君、もしかして、」

「ああああ!姫、早かったねッ!?」

「…うん。お手伝い、しようと思って」

「そ、そそっか!ありがとう!そんなに気を遣わなくてよかったのに!」

「そういうわけにもいかないって思って…」

「あらあらツッ君たら!さっ、姫ちゃん早くあがって!そんなところにずっといたら体が冷えちゃうわ」

「…お邪魔します」



やっぱりニヤニヤする母さんはなぜか俺にウィンクをして(どういう意味だよ!?)ご機嫌そうにキッチンへ戻っていく。
姫は行儀よく靴を揃えてから母さんの後ろを静かについて行ったので、俺もその後ろを遅めについて行ったのだった。


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