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「…姫、」



さくり、という音とともに俺は歩みを止めて姫をゆっくりと見つめる。
姫も同じようにゆっくりと俺を見つめ返して静かに俺の言葉を待ってくれた。

見つめ合う俺と姫。どんな時でも澄んでいる姫の瞳を見て―――俺の心は決まった。

きっと、どんな時でも姫はオレの傍にいてくれて…どんなことがあっても、この瞳が濁ることはない。
そう、信じることができたから。



「俺たちと一緒に、イタリアに行こう」



音がなくなる。雪がつもる音さえも。

無音の空間の中で、姫はぶれることなく…俺の目を見つめ続けた。
まるで何かを見極めるかのように……



「…辛い時も…悲しい時も…楽しい時も、嬉しい時も…一緒にいてくれたのは、ツナだったよね。
…恭弥の傍にいられなくなったときも……」



伏せられた姫の目。あの時のことを思い出しているんだろうか……

そう思うと胸が少し痛んだが、姫の言葉を静かに待った。



「…一緒に、連れて行って…ツナ。
今度は私が……あなたを支えてみせるから」



静かな…それでいて、俺にとっては強烈な言葉だった。―――狂喜で心が、震える。

一緒に連れて行ってほしいという言葉がどれだけほしかったか。
どれだけ……傍にいてほしかったか。

しかも、姫がオレを支えてくれるとも言ってくれるなんて。

ぎゅっと姫の体を抱きしめると姫がそっと目を伏せたのが気配で分かった。

きっと、姫の心の中には一生雲雀さんがいるだろう。
その気持ちを捨てろとは言わない。…でも、片隅でもいいから、オレの居場所がほしかった。

支えると言ってくれた姫の中に、オレが少しでもいると考えてもいい…?


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