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寒さが少しだけ和らいだ3月……ついにイタリアへと立つ日がやってきた。


山本君や獄寺君も一緒に。…そして、恭弥と、由里も一緒に。
幸いなことにあの群れの嫌いな恭弥がツナたちと一緒に行動するはずもなく、別ジェットで移動だったが。

ツナの秘書としていくことになった私は、イタリアに着いたと同時に仕事の内容を勉強し始めた。
ツナたちはイタリアになれる時間があるけど、私にはない。
守護者でもない私がツナたちと一緒にいるためには、私が努力しないと。

リボーンは最初「お前は巻き込まれただけだから無理しなくていい」と言ってくれたけど、そんなこと、私が納得するわけがなかった。
今は9代目の守護者の方に一通りのお仕事内容を教えていただいている。
どうやらボンゴレファミリーはマフィアでありながら、一般的な会社と仕組みは変わらないらしい。
していることもいたって普通で、正直、社長の秘書という感じだ。

主な仕事はツナのスケジュール管理。そして、書類の補佐。

ありがたいことに書類はイタリア語、もしくは日本語か英語で、読むのにそう苦労はなさそうだった。
恭弥のもとで書類整理をしていたこともあって、すぐに覚えることができた。



「姫、この書類を頼めるか」

「はい、コヨーテさま。これは…後ほど内容確認をして、9代目にお渡ししても?」

「あぁ、よろしく頼む。…姫は仕事を覚えるのが早いな」

「そう言っていただけて嬉しいです」

「9代目も感心されていたよ。“ツッくんはいい恋人を見つけた”と」

「…恋人…」

「違うのか?」



不思議そうな顔をして私を見つめるコヨーテさまに、言葉が詰まる。
ツナの恋人だと、言ってもいいのだろうか。

そんな迷いがコヨーテさまにも伝わったのか、くしゃり、と私の頭を撫でる。



「ま、とにかく、9代目はお前を認めてる。この調子で頑張るのだぞ」

「はい、コヨーテさま」

「…ん、そうだ。これをやろう」



ごそごそとコヨーテさまはポケットを探り、一つの飴玉を私の手に乗せる。

味は、いちご味。

あまりにもコヨーテさまのイメージからかけ離れているそのお菓子にまじまじと見つめてしまう。
そんな私の様子を、どうやらコヨーテさまは私がイチゴ味が苦手だと勘違いしたらしい。



「イチゴ味は嫌いか?」

「いえ。大好きです」

「よかった。あまり無理はするなよ」



じゃあな、と優しげな笑みを浮かべて去るコヨーテさまに少し大きめの声で感謝を伝える。
コヨーテさまはそんな私の声に一つ手をあげて応えるとそのまま行ってしまった。

その背を見送ると、私はさっそく飴の袋をあけて、飴玉を口の中に放る。
口の中いっぱいに広がる甘さが、疲れた体にちょうどよかった。

飴を口の中でころころと転がしながらコヨーテさまから預かった書類に目を通す。


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