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ツナに軽く説明したところ、守護者全員に早く説明した方がいい、という判断になった。
なら、日程調整をするね、と伝えると「なんか秘書っぽい」なんて言われて、笑いそうになった。

秘書っぽい、ではなく、秘書になるのだから。

獄寺君、山本君、ツナは今のところみんなに合わせることができる、と言っていたので、残るはあの場にいなかった笹川先輩、ランボ君、会ったことのない六道骸さん…そして、恭弥。

ランボ君はボヴィーノファミリーだというので、すぐに連絡がつき、継承式のことで、と話した瞬間、電話口でボスに泣かれた。すごい勢いで。
何よりも優先します!と言われて、ちょっぴり引いたのは内緒だ。
笹川先輩もどうやらツナたちと一緒に来たからか何も予定はないとのこと。

そして連絡が一番困難だったのが、六道骸さん。

話に聞くとかなりのマフィア嫌いだとか。連絡方法はボンゴレの諜報部を通してでないとできなかった。
今思い出しても掴めない話し方だった。

バカ丁寧なのに、ちょっと小ばかにしていて、…なんだかイラッとする。
しかも、電話じゃ出てくれないから、結局会いに行くはめになった。



「君が、噂の沢田綱吉の秘書ですか」

「はい。佐藤姫です。よろしくお願いします」

「よろしくなんてしませんよ。マフィアとなんかね。…で、何の用です」

「…、継承式のことで説明したいことがあります」

「今説明すればいいでしょう」

「全員で確認すべき点があります」

「僕にマフィアの巣窟に出向けと?」

「本部が嫌であれば、違う場所を用意します」

「場所の話をしているのではないことはわかっているでしょう」

「何かメリットがあればいいのですか」

「…ほう…そうきましたか」



私の切り返しに、面白がるような嫌な笑みを浮かべる。
上から目線を感じるその笑みにいらっとしつつ、感情を抑えなければこの人には勝てないとぐっと力をこめた。

まっすぐ六道さんを見つめると、六道さんの笑みが消える。



「継承式に出ることは、ボンゴレの後ろ盾を得るということです。
あなたの嫌いなマフィアを潰すのに、口実は必要でしょう。
ボンゴレの名を使って、ボンゴレの制裁だと言えばあなたは掟に触れない。
つまり、マフィアを好きにすることができる。それはあなたにとって大きなメリットでは?」

「………」

「その後ろ盾を得るために、ただ説明を受けるだけでいいのです。来ていただけますね?」

「…クフフ……、クハハハッ!!君は面白いですね!
…僕が霧の守護者を断れば困るのは君たちの方でしょう。
そんなに縛るのであれば、僕は霧の守護者になることを拒みます。それでもいいのですか?」



確かに、守護者を降りられて困るのは私たちの方だ。
でも、ここで怯んでしまっては今後、同じ手で私たちを揺さぶってくるだろう。

そんなことは許さない。…立場はこちらが上、もしくは同等だということを証明しておかなければ。



「では、あなたは復讐者の牢へ逆戻りですね」

「…!」

「あなたが復讐者から脱獄したことは知っています。…脱獄したのに、どうして再び捕まらないのか不思議に思ったことはないですか?」

「……」

「ボンゴレが、裏で手をまわしているからです。
あなたは霧の守護者だからと…しかし、あなたが降りるのであれば、あなたの身の保証はできかねます」

「……クフフ……なるほど…沢田綱吉の秘書に選ばれただけはある」



ねっとりとした視線が私に絡んでくる。…嫌な視線だ。値踏みのような、視線。

その視線に耐えていると、六道さんは小さく息をついて、ゆったりと足を組みなおした。


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