ずっと



「桜さん!」

「リクオさん!また会えてうれしいです!」



手を振るリクオさんに駆け寄っていくとリクオさんは椅子から立ち上がる。
着流しの中に手を入れる立ち姿はとても凛々しく、かっこいい。
いつもきれいだなぁ、だなんて思いながら持ってきたお菓子が崩れないように小走りで近寄る。

――あれから私はリクオさんとは毎日1,2時間だけ会うようになった。
その時間はまちまちだけど、リクオさんはわかっているかのように待ち合わせ場所に来てくれている。

待ち合わせは近くにある川にかかっている小さな橋の前。
春が近づいているからか、少しだけ桜も咲き始めていて、春の気配が感じられる。



「こんにちは、リクオさん」

「こんにちは、桜さん。…何を持ってるの?」

「ふふ、今日はこれでお花見しませんか?」



持ってきたのはみたらし団子に三色団子、蓬団子だ。

いつもリクオさんがおいしい甘味屋さんを紹介してくれるから今日は私が紹介しようと思ったのだ。
中のお団子を見せるとリクオさんは嬉しそうに笑って「いいね」と同意してくれる。



「じゃあ、僕のとっておきの場所に行こう」

「とっておき…楽しみです!」

「こっちだよ」



自然と手をとられて、どきりと心臓が高鳴る。

でも、リクオさんの横顔は変わらなくて、深い意味はないのかな、なんて。

でも誰かと手を繋ぐなんて何年ぶりかであり、ましてや異性とは初めて。
恥ずかしいことには変わりなくて、次第に顔が熱くなっていくのが分かった。

…せめて、リクオさんには伝わりませんように。

ドキドキする心臓をおさえて歩いていくと見えてくる一本の大きな桜の木。



「うわぁ…!綺麗…!!」

「僕も初めて見たときは感動したんだ。喜んでもらえて嬉しいよ」

「こんなにきれいな桜は初めてです!」



すでに満開を迎えているのかひらひらとたくさんの花びらが舞い落ちていく。
その桜を見惚れすぎているとくすくすと隣から小さな笑い声が聞こえてくる。

ハッとして隣を見ればリクオさんが楽しげに笑っていた。もちろん、私を見て。

恥ずかしくてかぁぁっと顔を赤くしながらもリクオさんに恨めしそうな視線を向ける。



「笑わなくても…」

「だって…あまりにも子供みたいに無邪気に見てるから…」

「…っ子供っぽくてごめんなさい」

「クスッ…拗ねない拗ねない。さ、桜さんが持ってきてくれたお団子を食べよう」

「…もう…はい」



桜の木の下、二人で座り込んでお茶とお団子を広げる。
甘いお団子に舌鼓をうつリクオさんの横顔をそっと見つめる。

―――桜が似合うお人だなぁ……

そこから視線を桜に向けてその風流さにゆっくりと思いをはせたのだった。







「(綺麗、だな…)」



舞い散る桜を愛しそうに見つめる桜さんの横顔をそっと見つめる。

その優しい眼差しで僕のことを見てほしいと思うのは、我儘なのだろうか。

…不思議だよな。会ったばかりの桜さんにこんな気持ちになるなんて。

目を細めて桜さんの横顔を見つめ、ゆっくりと桜へと再び目を向ける。


――この時間がずっと続けばいいのに。


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