女の戦いへ



お上が主催する「花見の宴」の日。

侍女たちがバタバタと私を着飾るために走り回っているのを見ながら「あぁそこまでしなくていいのに」なんて思ってしまう。
きっとそんなことを口にしたら侍女たちにキッと睨まれてしまうのだろうけど。

いつも以上に気合いの入った化粧を施されて、髪の毛を美しく結われる。
完璧ですよ、と侍女が満足そうにうなずくのを見て、私は初めて鏡を見る。

…おぉ、確かに化けた。私ではないようだ。



「あぁ、いけない!さ、姫様、遅刻してなりませんゆえ、急ぎましょう!」

「はい」



侍女に急かされて輿に乗り込むとゆっくり輿が動きだす。
そういえば夜の京は散歩したことなかった。
どんな風景が広がっているのだろうと再び窓を開ける。

――キラキラとした明かり、聞こえてくる楽しげな笑い声、昼とは違った華やかさがある。

いいなぁ…この中を散歩したい。…しかし、危険もあるだろう。

しばらくその空気を満喫していると宮中が見えてくる。
再び扇で顔を隠しながらお上のいる場所へとしずしずと歩く。
やはり噂声が聞こえてくるけど、この間よりは気にならなかった。

お上のいる場所へとつくと、すぐさま顔を伏せながらゆっくりと首を垂れる。



「あぁ、来たか、桜姫」

「はい。おひさしゅうございます、お上」

「近こう寄れ」



静かに頭を下げると少しだけ近くへ寄る。

それでも近くに、と所望されるお上に女房達の嫉妬の目が私にずさずさと突き刺さる。
あぁもう勘弁してくれ、と内心嘆きながらも少しだけ近づけばお上が御簾越しに嬉しそうに笑ったのがわかった。



「相変わらず美しいな、桜」

「(馴れ馴れしい…本当に勘弁してほしいわ…)お褒めの言葉、ありがたく存じます」

「ふふ、つれない奴め」

「…お上、わたくしはこれにて」

「帰るのか?もっと楽しんでいけ」

「…はい。ではお言葉に甘えて」

「桜姫様」



凛としているがどこか冷たい声が私にかけられる。
そっと目をそちらに向ければお上の隣に座っていた女御様が私を睨むように見ていた。

…あぁ、なんだか嫌な予感。しかもお上楽しそうに笑ってるし。



「わたくしたちとお話しいたしませんか?女同士で。…ね?」

「(うわぁぁぁ嫌な予感しかしない…!)はい。では、お上。御前失礼いたします」

「あぁ」



がんばれよ、と意味深に小さく呟かれた言葉にわかってるなら止めてくれ、と内心嘆いたことは仕方がないだろう。

こうして、女たちの戦いである御簾の向こうへと足を踏み入れたのだった。


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