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熱も下がり、体調もよくなったのですぐにリクオさんに会いに行く。

怒っていないだろうか。いや、すっぽかしてしまったのだ、愛想をつかされてしまったかもしれない。
はやる気持ちを押さえて走っていくといつもの場所にリクオさんの姿があった。



「リクオさん!」



思わず大きな声でリクオさんの名前を呼ぶとリクオさんはバッとこちらを向いて目を丸くすると私の方へ走り出し、…ぎゅっと抱きしめられていた。

え、と今度は私が目を丸くする番だった。

どうしてリクオさんに抱きしめられて、



「よかった…、…もう、来ないかと…」

「…ごめんなさい…心配、かけてしまって…」

「…うん。心配した。…一体どうしたの?」



ゆっくりと体を離して心配そうな瞳で覗き込まれる。

正直に熱が出て寝込んでいたこと、伝える手段がなかったことを伝えると「そっか…」とどこか安心したような笑みを浮かべた。

それも一瞬のことで、体調は大丈夫か、と体調のことを心配してくれる。
この通り、とくるりと一回りすればリクオさんはようやく本当の安堵の笑みを浮かべてくれた。



「それでも無理はダメだよ?」

「はい、ありがとうございます」

「…うん、じゃあ今日は無理しないためにも木陰で休んでよう」



こっち、と木陰に移動すれば少しだけ夏に近づいてきた暑さが緩和される。
ふぅ、と息をつくとリクオさんが繋いでいた手をぎゅっと少しだけ強く握った。



「ほんとはね、ちょっとだけ不安だったんだ。
いつも来てくれる桜さんが来なくて…もう、飽きられたのかなって」

「そんな…!」

「でも、今日来てくれて本当に嬉しかった。ありがとう」



…こんなにも優しい人を少しでも悲しませてしまったかと思うと胸が痛んだ。

私こそリクオさんに愛想をつかされてしまうのではないかと不安で仕方がなかった。
それは私だけではなくて、…私のことだけしか考えていなかった自分が恥ずかしかった。

目を伏せながら、私の本当の気持ちも吐露する。



「リクオさん…私も、リクオさんに嫌われたのではないかととても不安でした。
不可抗力とはいえ、約束を違えてしまったのですから……

でも、今日リクオさんが待っていてくださっていて、とても…とても嬉しかったんです。
私こそ、待っていてくださって…ありがとうございました」

「はは、お互いさまだね」



ふわりと笑うリクオさんにトクリと一つ心が音を立てる。

リクオさんの笑顔一つでこんなにも心が温かくなって……
リクオさんに会えなかっただけで、こんなにも苦しくて、嫌われるのではないかと不安になる。


――あぁ、私、リクオさんのことが、好きなんだ……

自覚したら胸がいっぱいになって、リクオさんのことをまっすぐ見れなくなってきた。
重ねられていた手を見つめていると目を合わせない私に小さく笑ってリクオさんは優しくぽんぽんと頭を撫でてくれた。



「…っ」



どんどん、好きになってしまう。

好きだと自覚した瞬間におぼれていくような感覚に怖く感じながらも、温まる心に身をゆだねたのだった。


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