21 幸せなのに、不安
――氷麗side
最近、リクオ様はとても機嫌がいい。
ずっと一緒に過ごしてきた私から見ればその機嫌のよさは一目瞭然だった。
今日も夕方に帰ってきてから、鼻歌が聞こえてきそうなほどご機嫌だった。
何か楽しいことでも見つけたのかしら…?
リクオ様が嬉しそうだと私も嬉しい。…だって、私はリクオ様の許嫁になったのだから。
許嫁、という言葉にかぁぁっと顔が赤くなっていくのがわかった。
今思い出しても胸が熱くなる。リクオ様が妖怪になった日、総大将が私をリクオ様の許嫁にしてくださった。
妖怪のリクオさまはあまり興味のなさそうな顔をされていたけど、否定することもなかった。
…否定しないってことは、許してくださっているって考えていいんですよね…?
嬉しさからにやける頬をおさえながら、手早く夕食の片づけを終わらせる。
自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていると桜の木の下でリクオ様がぼんやりと月を眺めているのが目に入る。
かっこいいなぁ、なんて見惚れているとふいにリクオ様が小さな笑みを浮かべた。
その笑みにドキリとする。
妖怪の姿のリクオ様が笑うなんて敵と対峙しているときくらいだ。
いや、敵と対峙しているときの不敵な笑みとは違う。
柔らかくて…優しくて、見ているこちらがどきどきするような笑み。
「リ、リクオ様…!」
「…あぁ、氷麗か」
「あ、あの…っ最近、何かいいことでも…?」
思わず話しかけてしまっていた。
――だって、あの笑顔…まるで大切なものを思い浮かべたときのような……
恐る恐る尋ねてみればリクオ様は私から視線を外して、ゆっくりと桜を見上げた。
まるでそこに愛しい人がいるような視線で、桜を見ていた。
「あぁ、まぁな」
「…っそれは、一体…」
「ん?…言えねぇな」
フッと笑みを浮かべるリクオ様にドキドキと心臓が高鳴る。
あぁ、己惚れたい。リクオ様の幸せの先に私の存在がいると思ってもいいですか…?
私という許嫁の存在が、あなたの心にあると己惚れていいですか?
その横顔をぼんやりと見つめているとリクオ様の視線がゆっくりと私に向かう。
そしてふわりとその場から離れたかと思えば、私の前に立っていた。
「まだ冷える。早く寝ろよ」
リクオ様が羽織っていた羽織を私に優しく羽織らせるとリクオ様はゆっくりと歩きだす。
まだリクオ様の温もりが残る羽織をぎゅっと抱きしめて、高鳴る心臓の音を静かに聞いていた。
リクオ様、私はこんなにも好きになってしまっているんです。
リクオ様の許嫁になれたことを喜んでいるのは私だけじゃないと思っていいですよね…?
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