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「よぉ、体調はどうだい?」
「はい、大分よくなりました」
読んでいた書を置いて、いつの間にか入り込んでいる鯉さんに視線を向ける。
吸っていた煙管の煙が自分に向かないように気を遣ってくれる仕草に「こういうところがモテるんだろうなぁ」なんて考える。
煙を燻らせる姿になぜか感心していると鯉さんが片目をつぶって悪戯っぽく笑った。
「なんだい?見惚れてたかい?」
「ふふ、そうですね。似合ってるなぁとは思いましたよ」
「へぇ、そりゃあ嬉しいね」
鯉さんは色っぽく笑うといつの間にか私の隣に座っていた。
そして私の肩を優しく抱き寄せると優しく囁かれる。
「そういうところが、たまんねぇんだよな」
「よくわかりませんけど…」
「フッ…可愛いぜ?」
「…っ、鯉さん、ふざけすぎです」
「お、照れたかい?」
「鯉さん!」
からかいすぎだ、という意味を込めて名前を呼んだが、鯉さんは私の体を離すことはない。
それどころか私の頬をするりと撫でて、熱っぽく私を見つめる。
…っ、これではまるで鯉さんが本当に私のことが好きみたいじゃないか。
そう考えた自分が少しだけ恥ずかしくて、己惚れてはだめだと強く言い聞かせた。
「…あまりからかいすぎると女の子に嫌われますよ」
「おっと、そりゃあ困る。…けど、からかってるわけじゃねぇよ」
「え…」
「…お、侍女が来る気配がするな。今日は短くて寂しいぜ。じゃあな、桜」
ちゅ、と頬に柔らかい感触。
頬にキスされたのだとわかった時には鯉さんはすでに姿を消していた。
キスされた頬を押さえて呆然と鯉さんが出て行った方を見つめる。
「あら、姫様。顔が赤いですわよ?」
「…っ、あ、暑くて…」
「まぁ!またお熱ではありませんか!?」
失礼しますよ、とおでこに手を当てられる。
もちろん、熱なんてなくて「大丈夫そうですわね」と笑われる。
おでこは熱くない。でも、キスされた頬が異常に熱くて仕方がなかった。
深い意味はない。ただの親愛のキスのはず。
…親愛のキスって何!?そんなの親子でもしないわよ!!
そう心の中で葛藤しながらしばらく頬に手を当てたまま固まっていたのだった。
――彼は遊び人。私のことも靡かない面白い女だと思われているだけ。
彼が本気な訳、ない。
(それに、私は、リクオさんが……)
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