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――氷麗side
「じゃあ行ってくるね」というリクオ様の声が聞こえてきて、あら?と首を傾げる。
最近、リクオ様は毎日のように出かけていく。しかも同じ時間に。
もしかして最近ご機嫌なことと何か関係があるのかしら…?
リクオ様のご機嫌の理由が知りたくて、少しだけ罪悪感がありながらも好奇心が勝ってリクオ様の後をついていく。
しかしさすがぬらりひょんの孫。のらりくらりと歩いていくからついていくのがやっとだ。
そしてようやく立ち止まったかと思うと橋の近くで本を読み始めた。
…こんなところで読書…?
読みにくくないのかしらと家の陰から見守っていると、
「リクオさん!」
「あ、桜さん」
「お待たせしました」
「そんなに待ってないよ」
――だ、誰…!!あの娘は、誰なの!!
少しだけ可愛らしい着物に、半分だけ結い上げられた長い髪。
くるりとした目が愛くるしいのだろうが、私からみたら憎たらしいくらいだ。
世間一般的に言ったら「可愛い」のだろうが、そんな風には思えなくてギリギリと壁を握りしめてしまう。
今日はどこに行きましょう、と話しかける娘をぎろりとにらんでいると隣にいたリクオ様がこちらに視線を向けてきたからあわてて顔を引っ込める。
…もしかしたら無意識のうちに殺気立っていたのかもしれない。
「リクオさん?」
「ん?ううん、何でもない!さ、行こうか」
「はい」
そんな会話が聞こえてきて、再びそっと家の壁から顔をのぞかせる。
今日はね、なんて会話をしながら歩いている二人を見て、…後悔した。
――リクオ様、なんて優しい目で彼女を見ているの……
彼女のことがとても大切だと言わんばかりに……優しくて、柔らかな視線だった。
私には、一度も向けられたことがない目だった。
リクオ様にとって、私は許嫁なんですよね…?
それなのに、あの娘は一体誰なんですか?いつ会ったんですか?いつから…好きなのですか。
聞きたいことがいっぱい頭に浮かんで、気持ちが暗くなっていくのがわかった。
「まさか…夜の若も、同じ気持ちなのですか…?」
この前、桜で見せていた表情は、あの娘を想っていたの…?私、ではなくて?
…本当に、私の己惚れだったのだというの…?
あの娘はリクオ様が妖怪だと知っているのだろうか。
リクオ様に私という許嫁がいることを知っているのだろうか。
…リクオ様の心は、私にないの…?
(ジリリと嫉妬の炎がくすぶったのがわかった)
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