再会



しばらくはおとなしくしていた。慣れない京言葉、慣れない習慣。
ついていけないことが多すぎて、勉強しなければと部屋にこもり勉強していた。

しかし、それに飽きてしまうのも事実。

ちょっとずつスケジュール管理もできるようになっているので、侍女が来る時間帯、私が一人になれる時間帯などが大体わかってきた。

…と、なれば目が向けられるのは外の世界。

今日はちょうど侍女が来る時間が遅い日。ならば、抜け出すなら今しかない。
そうと決まればすぐさま髪を結いあげて、重たい着物から身軽な着物へと着替える。
鏡の前に立ち、変なところがないかどうか確かめて懐にお財布を忍ばせた。

そっと障子をあけて、気配を殺すとそっと前に使った抜け道を使って外へと出る。
すぐさま走り出し、町へと向かうと活気のある声が聞こえてくる。

わくわくする胸をおさえて、この前行けなかった方面へと足を向ける。



「お嬢さん、見慣れない顔だねぇ!旅のお方かい?」

「いえ、この前引っ越してきたんです。どうぞよろしくお願いします!」

「あぁなるほどね!よろしくね、お嬢さん」



ほら、よろしくの印だ、とお饅頭を一つくれる。

ほかほかの出来立てをくれたので、おいしそうな甘い匂いが鼻をくすぐる。
おいしそう、と頬を緩ませて「ありがとうございます!」とお礼を言った。

そのおいしいお饅頭に舌鼓をうっていると綺麗な桜の花びらが私の目の前を通っていく。
こんな時期に桜?とあたりを見渡すと大きなお屋敷に大きな桜の木があるのを見つけた。

でもこんな時期に桜なんて…どういうことなのだろう、と思いながらもその桜をじっと見つめる。



「…あ、人様のお宅を見つめるなんて失礼だ…」



いけないいけない、と頭を振り、再び歩を進める。

進めば進むほど閑静な住宅街が広がっていく。時々奥様達の笑い声が聞こえてきたりしながら。
…どうやらこの辺りは住宅街のようだ。町の方へ戻ろう。

そう踵を返すと少し離れたところにリクオさんの姿を見つける。

ドキリ、と胸が高鳴って、思わず「リクオさん!」と少し大きめの声で彼の名前を呼んでいた。
彼はすぐに私の存在に気付いたようで、目を丸くしたがすぐに笑顔になる。



「桜さん!」

「お元気でしたか?」

「うん、元気だったよ。桜さんは?」

「私もです」

「あの時の用事は大丈夫だった?」

「あ…はい。おかげさまで大丈夫でした」



慌てて帰ったときのことだろう。あの時は本当に申し訳なかった。

あはは、と苦笑いするとリクオさんはあまり深く聞いたらダメなことだと察したようでそれ以上は聞かなかった。



「街にはもう慣れた?」

「いえ…まだまだ知らないところばかりです」

「そっか…じゃあ、案内するよ!どう?」

「…!はい!よろしくお願いします!」



思ってもみない提案に嬉しくって思わず満面の笑みでうなずく。
リクオさんも嬉しそうに笑うと行こう、と歩き始めた。


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