もっと



あの店は魚屋、あの店は八百屋、あの店は和菓子屋、あの店は小物屋、などいろいろなお店を教えてくれる。
しかもこの店のあれがおいしいとか、この店のこれがおすすめとか詳しく。

その説明を聞きながらリクオさんの横顔をそっと見つめる。

説明する横顔はとてもキラキラと輝いていて、嬉しそうで…この町が本当に好きなんだとわかる。
この人はずっとここに住んでいるのだろうか。それとも、私のように引っ越してきたのだろうか。

――知りたい、もっと。彼のことを……



「――でね、ここの練りきりが一番おいしいんだ。…桜さん?」

「…あ……、…えっと、」

「……ちょっと休憩しよっか!」



練り切り食べよう、と言って傍にあった椅子に座ると練りきりとお抹茶を頼んでくれる。
…リクオさんのことを考えていてあまり聞いていなかったなんて恥ずかしくて言えない。

疲れてはいなかったけど、疲れたことにしておこうと心の中で決めておく。



「リクオさんは、ずっとここに住んでいるんですか?」

「うん。ここで生まれてここで育ったよ」

「ご兄弟はいるんですか?」

「いない。けど、…兄弟みたいに育った仲間はいるかな」

「仲間…いいですね。私は…」


離されてしまったから……――


「お待たせしました!はい、練りきりとお茶!」



思い出した仲間のことを振り切るように出てきた練りきりとお抹茶。

練りきりとは思えない美しい和菓子に思わず感嘆の息を吐きながら見つめてしまう。



「キレイ…本当にお菓子なの…?」

「ははっ、そう思うよね」

「食べるのがもったいない…!」

「食べてもおいしいよ」

「…っ、いただきます」



手を合わせてその美しい練りきりに黒文字をそっと入れる。
もっちりとした感触にうっとりしながらも口の中に入れればほろほろと甘さがほどけていく。

こんなにおいしい練り切り初めて…!!

上品な甘さにじぃぃんと感動し、少し渋めのお抹茶もいただくと幸せが広がっていく。
ほぅ、と幸せのため息をつくとくすくすと隣で笑い声が聞こえてきた。


――あ、リクオさんが笑ってる。



「そんなに喜んでもらえてうれしいよ」

「はい!すごいです…こんなにおいしい練りきりは初めて…!!」

「僕のもいる?」

「いえいえ!そんなに食い意地ははっておりません」

「ははっ、そっか」



すす、とお茶をすするリクオさん。
その隣で練りきりに舌鼓をうつ私。

とても穏やかな時間が私たちを包み込んでいた。



「リクオ様―!リクオ様はいずこー!!」

「…今のは、リクオさんを探している声…?」

「あぁ、ばれちゃったか」

「(え?ばれた?)」

「家抜け出してきたんだよねー」

「えぇっ!!??」



いまさらっといけないこと聞いてしまった!?

抜け出してきたって…一体リクオさんって何者なの!?


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