また
あははーと笑顔で「抜け出した」というリクオさんに内心冷や汗をかく。
リクオ様!!と大声で叫びながら私たちの前で立ち止まったのは二人の男性。
一人は大柄で鉄紺色の僧衣を纏った男性、一人は黒い法衣に袈裟を纏い、笠をかぶった男性。
お二人ともとても慌てている様子…というかすごい形相で「リクオ様!!」とリクオさんの前に立った。
そんな二人にリクオさんは「早かったね」と笑うばかり。
こんなにも心配させておいて「早かったね」とは……お二人も同じことを思ったのかがっくりと肩を落とした。
「心配しました…急にいなくなっていたので…」
「書置きは残したよ?」
「出かけてくる、一言でしょう!どこに行くとか何時に帰るとかはなしに!」
「わかんないことは書けないし」
「そういう問題では、」
「時にそちらの女性は?」
黒い法衣の男性の目が私へと突然向けられる。
その瞳には小さな警戒心と好奇心が浮かんでいる。
どういった関係なのか、彼に徒名すものなのか、見極めているようだった。
その視線が少しだけ居心地悪く、しかし、特に後ろめたいことはないので彼の目を見つめ返す。
そんな私の様子にリクオさんが楽しそうに笑ったことは知らず。
「彼女はこの前浪人に絡まれているところを助けたんだ」
「そうですか。…拙僧は黒田坊と申す」
「オレは黒田坊だ」
「桜です。よろしくお願いします。…リクオさん、もしかしてこの方たちがお仲間さんですか?」
「うん。ちょっと過保護でさ」
「ふふ、そのようです」
「「リクオ様―!!」」
そんな言い方はないでしょう、なんて大の大人の二人が泣きそうな顔をするのを見て本当に大切なんだと実感する。
そしてそんな仲間をもつリクオさんがとてもうらやましくも思った。
いいなぁ、なんて思いながら三人の会話に耳を傾ける。
「リクオ様、今日は帰っていただきますぞ!牛鬼様がお待ちです」
「…ん、牛鬼が来てるのか。ごめん、桜さん。今日は僕が帰らないと」
「そんな、謝らないでください。どうやら大事なお客様のようですし」
「ごめんね。…また、街を案内させて?」
“また”
その言葉がどれほど嬉しかったことか。
今日出会えたのは偶然だった。だがまたこの偶然が続くとは限らない。
だけど、リクオさんは“次”を約束してくれた。
私も彼に会いたい。また、いろんな話を聞きたい。もっと、知りたい。
想いの大きさは違えども、同じように思ってくれていたことに嬉しく思わない人がいようか。
「はい!!よろしくお願いします!」
「うん、またね」
ふわりと綺麗な笑顔を浮かべて、リクオさんは行こうと羽織を翻して歩き出す。
黒田坊さんは私に一礼して二人はその後ろをゆっくりとついていく。
仲間、というより部下という感じだな、なんて思いながら三人の背中を見送ったのだった。
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