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「じゃあ検査に行こうか」とコムイに再び声をかけられ、聖はコムイの後ろをついていく。
教団の中心部分につくと、二人は逆三角形の乗り物に乗って下へと降りて行った。
「そういえば聖ちゃんって名前は日本名だよね?」
「はい。父が日本人で母はフランス人なんです」
よく聞かれる疑問に聖はいつものように答えるが、いつも以上に胸が痛んだ。
…これから長く在籍するであろう教団の人に嘘をついているから。
でも、本当のことを今言うわけにはいかなかった。
痛む胸をおさえながらも、聖は胸の中だけで「嘘をついてごめんなさい…」と呟いた。
「ハーフなんだね!だから黒目黒髪じゃなかったんだー」
納得したようにうなずくコムイに聖は罪悪感を感じる。
ごめんなさい、コムイさん。
でもいつか絶対に話しますから―――
これ以上嘘を重ねたくなくて、聖は口を噤んでいるとゆっくりとエレベーターが止まった。
すると上に照らされた大元帥たちが突然現れる。
『それは神のイノセンス』
『全知全能の力なり』
『またひとつ…我らは神を手に入れた…』
「ボクらのボス、大元帥の方々だよ」
「こ、こんにちは」
近寄りがたい雰囲気の大元帥にもちゃんと挨拶するあたり、礼儀正しい聖らしい。
コムイもそんな礼儀正しさに妹のような、娘のような優しい視線を向けた。
「さぁ聖ちゃん、きみの価値をあの方々にお見せするんだ」
「価値…?」
どういうことだろう、と不思議に思っていると急に妙な浮遊感に包まれる。
驚いて、慌てて見上げれば巨大な白い物体が目に入る。
「な、なに…?」と戸惑っていると体を探られように触手が聖に触れる。
体の中を隅々まで探られるような不快感に聖はたまらなく名を呼んでいた。
「い、いや…っ風!」
“聖様…落ち着いてください…”
「お、落ち着けませんっ」
“大丈夫です。聖様を傷つけようとは思っておりません…”
「本当に…?」
“はい”
コムイはなにがなんだか分からなくなり困惑する。
聖が“フウ”と言った瞬間、聖の髪と目が真っ黒に染まり、その上聖一人で話し始めたのだから……
「(どうなっているんだ…?)」
いろんな考えが浮かんでは消えとその繰り返し。
しかし、ヘブラスカの声で現実に引き戻された。
「な、なんていう…子…だ……
シンクロ率が…100%を超えて、いる……
しかも同化に…近いものを感じた…」
「100%をすでに超えている!?」
「は…い?」
わけがわからないが、とりあえずおろしてもらえた。
気持ち悪さは残るが、地に足をつけることができたことで少しだけ安心した。
触手の持ち主である白い彼女を聖はゆっくりと見上げた。
「どうやら…お前とイノセンスとのシンクロ率は100%以上のようだ…」
「…それはいいのでしょうか…、…あ!」
今更、聖は自分の姿が元に戻っていることに気がつく。
ついつい感情に任せて風を呼んでしまったことを後悔したが、時すでに遅し。
もし追及されたら、と困ったように眉を顰めたが、とりあえず自分の姿を金髪の姿に戻った。
「おどかすつもりはなかった…ただお前のイノセンスを知ろうとしただけだ」
「そうでしたか…」
「海神聖…お前は暗黒の未来で『世界の陪審員』となり白の世界を守ることになるだろう。
だが黒に一度支配されれば世界は暗黒に覆われる……」
「(陪審員…鍵…のこと?)」
「いや〜すごいよ!さすがクラウド元帥の弟子だね〜!まさか入団当日から元帥候補が現れるなんてね〜」
「元帥候補…?私が…?」
「そうだよ。シンクロ率100%以上のエクソシストは次期元帥候補になれるんだ」
ぐっと親指を立てるコムイに神々しい声が降りかかる。
「コムイ……聖は…特別…だ……そのイノセンスの性能を見て驚くだろう…」
「どんな力なんだい?」
「それは…本人が説明する…」
『戦え』
『それがイノセンスに選ばれたお前の宿命…』
『宿命なのだ…』
「(宿命…ですか…)」
「じゃ、改めて入団おめでとう。ようこそ黒の教団へ。
世界のためにがんばりましょ。一銭にもならないけどね」
パチンっとウィンクするコムイ。
気さくな仕草に聖はお茶目な人ですね、と少し笑い握手を交わした。
「聖…お前に神の加護があらんことを…」
「…ありがとうございます、ヘブラスカさん」
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