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「聖ちゃんのイノセンスってどんなのなの?ヘブくんは特殊って言ってたけど…」

「えっと…私のイノセンスは、ありません」

「…え!?」


ないってどういうこと!?
でもヘブくんはシンクロ率図れたし…!?

首をひねるコムイを見て意図が正しく伝わっていないことに気付いたのか、慌てて聖はつけたした。

それがまたコムイを混乱へと導くのだが。



「あ、いえ、あるんですけどないんです」

「どういうことだい?」

「私のイノセンスは…全てのイノセンスを使えること」

「!?」

「もちろん、本物の適合者が持っているイノセンスは扱えませんが…あくまで本物ではない本物を使えるんです」

「…、…つまり、イミテーションだけれど、本物のイノセンスと同等の力を使えるってこと?」

「そう…ですね。私特有のイノセンスもあるのですが」



抽象的な説明で申し訳ないです、と苦笑する聖にコムイは大丈夫だよ、と微笑み返す。
しかし、コムイの胸中は「研究しがいのありそうなイノセンスだな…」と考えていた。

詳しくはクラウド元帥に聞くね、と言って、再び上の階へと上がる。
そのあと聖をリナリーに部屋に案内させ、コムイは一人水路に向かった。



「クラウド元帥」


一言声をかけると元帥は振り返らず、ただ1つ聞く。


「聖のシンクロ率は?」

「…100%以上でした」

「そうか…さすが私の弟子だ。…コムイ」

「はい」

「頼みがある。聖を任務に就けるときは単独にしてほしい」

「…!?どうしてですか?
確かに聖ちゃんは神田くんから背後をとれるほど強いです。
ですが単独任務だけではあまりにも危険すぎます」

「…一緒にいるエクソシストが危険に巻き込まれる可能性があるからだ。
例え、リナリーや神田クラスのエクソシストでも…な。
聖が行くところには高位の…レベル3のアクマが集まる」

「どうして…!?」

「それはあの子が言える日が来たら……いや、理由が分かったら言うだろう。
聖自身どうして自分が狙われているのか分からないようだからな。

アクマたちが聖の家を襲ったときは自分が適合者だから、と思っていたらしい。
だが私のところで修業しているときもレベル3のアクマが来た。
なぜかはわからないが、きっとなにか訳があると思ってる」


それに髪と目のこと……あまりバレたくないみたいだしな。
あの娘には秘密にしたいことがたくさんあるようだし……
予防線を張ってやるのも師匠の務めというものだろう。

単独任務がどれだけ危険なものかわかっているからこそ、コムイは決断を渋っているようだが、しばらくの沈黙の後「…わかりました」と苦しげに頷いた。



「ですが出来るだけ、ということになりますが」

「それでいい。…礼を言う、コムイ」

「いえ…」

「聖をよろしくな」



悪い虫は駆除しろよ、と弟子馬鹿な発言を残して、クラウド元帥は舟に乗り込む。
じゃあな、と背を向けるクラウド元帥にお気をつけてと声をかけてその背を見送った。

船が見えなくなり、コムイ一人になってもその場に佇んでいた。



「任務は一人……アクマが襲ってくる…」


コムイのつぶやきは水の音に消されていった――


そしてコムイはこの時忘れていた。
聖の目と髪が黒くなったことを……


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