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「うっ…くっ…、…ごめん…なっ…さいっ!」
喉の奥で泣き声をこらえようとする鈴。
発動をとくと綺麗ですべるような金髪に変化する。
漆黒の瞳は深い碧眼に戻っていた。
紛れもなくその姿は聖―――
「ご、めんな…さいっ…!ホントに…っごめ、んな…さいっ…!」
こらえようとすればするほどあふれる涙。
顔を覆っている指の間から止めどなく涙は滑り落ちていった。
罪悪感と…申し訳なさと…切なさと……
“鈴”を覚えてくれた嬉しさと……
改めて溢れ出してきた『愛しい』という感情……
すべてが入り交じり涙となって落ちていく。
涙を止める術がわからずただただ手を濡らし、腕を濡らし、団服を濡らし、大地を濡らした。
そんな聖に我慢がならなかったのか、また髪は黒くなる。
「聖様…」
突然現れたのは黒スーツ…燕尾服に似たスーツを着た男性。
顔つきは中性的だが男性だとすぐにわかるほどのかっこよさ。
しかし今はその顔も聖の様子に心を痛めて悲しそうだった。
「聖様…泣かないでください…」
その声はいつも聖が風と呼ぶ者の声。
いつも声のみだったが、今回ばかりは実体を現していた。
風は泣き崩れる聖をそっと包み込むように抱きしめる。
聖には何よりも温かく感じた。
いつも…辛いとき一緒にいてくれた、聖の家族とも言える人。
「風…」
「あなたのその涙は悲しすぎる。どうか…泣かないでください」
優しく涙をぬぐってくれる。
聖は小さくうなずいて、ぎゅっと一度強く目をつぶった。
…何かを、吹っ切るかのように。
「もう私は大丈夫です。ユウが覚えていてくれた…それだけで充分ですから」
にこりと笑う聖の頬にはいまだに涙が流れていた。
きっと心は泣いている。きっと未だに胸が痛むのだろう。
でも、主である自分が泣いていたら心配する者をさらに心配させてしまう。
だから、少しでも笑みを浮かべなければ、という気持ちが痛いほど伝わってきた。
風は心から慕う主の気持ちを無下にしたくなくて、少しだけ眉を寄せたが無理やり笑みを浮かべる。
「いえ。私は聖様に笑顔でいてほしいだけですから…、…大切な、家族なんでしょう?」
「うんっ…ありがとう、風」
くすぐったそうに笑うと元気が出たのか聖に小さな笑みが戻る。
ようやく見せた笑顔に風は少しだけ安心したのか、風は笑顔で消えていく。
“がんばってください…聖様…”
「はい…がんばります…」
元気づけるように優しい一陣の風が流れた。
なびく髪はもう金髪に戻っている。
満たされた心にじんわりと温かさを感じながら聖は立ち上がった。
――神田のいるところに戻るために……
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