「鈴…」



神田は信じられなかった。
イノセンスを発動させた聖の髪と目は真っ黒に染まったのだから。

そして…神田の初恋の人の姿になった……

聖がふわり、と優しい笑みを浮かべるのを神田は信じられない気持ちで見つめていた。



「はい。鈴であり聖です。ユウ」

「なんでお前…」



言葉がみつからない。
オレの探していた鈴はこんなにも近くにいたんだ…と。

神田からこぼれた疑問に聖は困ったように微笑んだ。



「それは……ユウにも言えない…秘密があるから…」



運命であり、使命だから……

そう呟いて、聖は少し寂しそうに目を伏せる。
そんな聖に神田は怪訝そうに軽く眉を顰めた。



「オレにも言えない秘密…?」

「はい。でもいつか必ず…話しますから。時が来れば、必ず……
だから、それまで待っていてください…。…そして…気付いてくれて、ありがとう」



今の聖は入団して一番の笑顔を見せているだろう。

この笑顔は初恋の相手鈴だとわかった神田には効果が莫大であったのだった。



「(ヤバイ可愛い…っ)オレはまた会えて嬉しい、鈴。いや…聖…」

「私もです、ユウ。…あ、でもユウって呼ばれるの…嫌いなんでしたね…」

「いや…お前ならいい…」

「本当ですか?なら、ユウって呼びます」



聖はにこっと笑うと、その眩しい笑顔に神田の顔はさらに真っ赤に顔を染まる。

そんなことも気づかず、…聖は更なる爆弾を投下した。



「なんだか…私だけの特権みたいですね」



神田は切実に思った。
恐ろしいほど素で恥ずかしいことを言うのをやめてほしい、と……

神田が高鳴る胸を必死でおさえると、聖は困ったような表情を浮かべる。



「それであの…この姿を保つことはあまり長くできないんです……
この金髪碧眼の姿が本来…いえこっちが本来なんですけど…なんていうか金髪碧眼が普通の姿なんです。だから…」



うまく説明できないのか、困ったように言葉を濁しながら聖は説明する。
その姿に内心神田がきゅんきゅん(死語)していたのを知っているのは、遠くで見ていた風だけ。

幸せそうでよかった、と風は主である聖の表情を見ながら穏やかな笑みを浮かべる。

聖は立場上、幸せを遠慮するような…どこか諦めているようなところがあった。
そんな聖が初めて自分からつかみ取ろうとした幸せ。
どこまでも遠慮深い聖が幸せそうな表情をしているのだから、祝福するばかりだ。

こうして…なんだかピンクの(神田オーラ)雰囲気に包まれながら汽車は教団へ向かうのだった。


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