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風のように素早い動きで大地をかけていく影が三つ。
金糸のような美しい髪が神田の頬をかすめた。
「ユウ、レベル1は50体ほど。レベル2は10体ほど。レベル3が…2体いますね」
「…わかるのか?」
「…はい。なんとなくですが…」
違う。
本当はこの地に着く前に聖が風を呼んで確認させていたのだ。
情報は多いに越したことはない。どのように戦えばいいのか事前に考えることができ、…結果的に任務の成功率が上がる。
…しかし、風に確認させたことは神田には言えない。それは自分の正体を明かすことと同じなのだから。
聖はごまかすために曖昧に頷いた。
「え!?それホントさ!?」
「うるせぇよ、兎。聖の半径1m以内に入るな」
聖の言葉に身を乗り出すように反応したラビは自然と聖に近づく。
それが許せなかった神田は走りながら器用にも聖の体を引き寄せ、ラビから遠ざけさせる。
ラビは溺愛しすぎさ…と思いつつ口には出さない。
「「「っ!!」」」
肌に突き刺さるような殺気が周りを包み込む。
聖は押し返すように殺気を出し、神田は見えない敵を睨みつけた。
「…さっさと出てこいよ」
神田の声が合図のように四方八方から飛び出してきたレベル1のアクマ。
途端にアクマキャノンが三人を襲う。
「ユウ、ラビ、別れて破壊しましょう!」
「了解さ!」
「わかった」
三つに分かれる戦力。
聖が分かれて破壊することを提案した理由は2つ。
一つはラビの前で発動するわけにはいかなかったから。
もう一つは…二人がいると本気を出すことができないから。
離れる三人を影からにやりと笑いながら見つめるレベル3のアクマがいたことには誰も気づかなかった。
「イノセンス発動!」
黒くなる髪をみるのはもう慣れた。
“蒼桜 紅朱長剣”
「雷剣!」
剣を振り下ろすと無数の雷がアクマに向かって落ちていく。
この技でだいたいのアクマを破壊することができる。
…そう、レベル2を除いて。
にやりと笑うレベル2のアクマたちに、海神は小さく息をついた。
「やはりレベル2のアクマは一筋縄ではいかないのですね…」
“六幻 発動!”
「これで一体一体、破壊します!」
切り込もうとした瞬間…全てのアクマが消えていく。
本当に一瞬のことで、何が起こったかわからない聖は動くことができない。
少しだけ残っていたレベル1のアクマさえ、聖の存在を無視してどこかへ飛んでいってしまう。
ついにはレベル1のアクマの残骸しかなくなり聖一人取り残された。
「…どういうこと…」
「お久しぶりです、聖様」
聞こえてきた声にふり返れば、この前神田との任務の時にいたレベル3のアクマ。
たしかあの時は千年伯爵に伝言を頼んで逃がしたはず…
聖を殺す気はないが誘拐するつもりはある。
充分に気をつけなければ…と少しだけ警戒心を強めた。
「…お久しぶりですね、アクマさん」
「私の名前はミオンと申します。この前は名乗れませんでしたね。以後お見知りおきを。
…いつまでも聖様にアクマと呼ばれるのも哀しいですし」
ふふっと笑うミオンにそうかもしれない、と聖は思い直した。
アクマといえどやはりレベル3となると“心”を持っている。
名前を知られていないのはどれだけ苦しいか知っているから……
「…ミオン、ですか。それで今日はどうされたのですか?」
「おわかりでしょう?聖様を迎えにあがりました」
「私は行かないと言いました。千年伯爵にちゃんと伝言したはずですが」
「伯爵様は『もっとほしくなりましタv』と仰ってました」
「はぁ…」
苦笑する聖にミオンは笑みをこぼす。
しかしミオンは真剣な顔つきになった。
「聖様、お願いでございます。一緒に来てはくれませんか?」
「何度同じ事を問われようと答えは同じですよ。行きません」
「…聖様、今は私ですがいつかノア様がお迎えにあがるようになると思います」
そうなる前に来てほしいのです。…ノア様では聖様が危ない。
無傷で聖様を連れて行かれることはないかもしれないのだから……
ノアの非情さを十分に知っているミオンだからこそ、危惧したこと。
しかし、聖はますますわからなくて、怪訝そうな顔になる。
「どうしてですか?あなたでもノアでも私は負けるつもりも従うつもりもありませんよ?」
「…そうですね…」
「ならお話はこれまでです。今日はあなたを破壊しますから」
「…仕方、ありませんね」
ミオンはふぅっと諦めたように息をつく。
…聖様にはきっと勝てないでしょう。
ですが初めて人間で好きだと思った聖様に破壊されるなら……
「では、はじめましょう」
ミオンの声を合図に聖はイノセンスを発動させた―――
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