あなたに心は奪われてるの。
今の自分って本当に“自分”なのかな。
そう自分で思ってしまうほど今の状態ってすごいと思う。
今まで何人もの人と付き合ってきた。
年上、年下、タメ…時には不倫だってしたことがある。(不倫は不可抗力だったというか…簡単に言うと相手が既婚者って知らなかったんだよね)
チャラい男やすっごく真面目な人まで、自分でいうのも何だけど人生経験豊富な方なんじゃないかな、って思うくらいだ。
そんな私は実は一度も自分から好きになったことがない。
飽きっぽいし、その時はそれなりに好きだけど、やっぱりそれなりにしか好きじゃないからすぐに別れた。
別れて、付き合って。その繰り返し。
別にそんな気はないのに彼氏がいないときがないから「男好き」だのなんだの女の子から言われるし。
男は男で勝手に「軽い女」って思ってるし、全く嫌になる。
こんな私が簡単に友達なんて作れるはずなくて、心から友達だと呼べるのはたった一人しかいない。
あ、名前は山本武っていうんだけど。
武だけは本当の私をわかってくれて、私をただの友達として見てくれる。
それが嬉しくて、私も友達としか見れないんだけど、また最近私には何十何番目の彼氏が出来て、それが武の心配の種の一つらしい。
私はそんなに心配してないんだけど、なんせその相手というのが、
「咬み殺すよ」
で有名な並盛の支配者、雲雀恭弥だからね。
まぁ心配になるのも無理はないけど、私としては違う意味で心配なんだよね。
心配っていうより、…うん、もう薄々感じ始めていて、怖いというか…。
「姫」
「あ、恭弥」
そんなとこで毛布もなしに寝てたら風邪ひくよ。
苦笑しながら私に毛布を渡してくれる恭弥に「ありがとう」と言ってその暖かい毛布を受け取る。
ちなみにここは恭弥の城、応接室。そして私が今寝ようとしているのはそのソファー。
恭弥は今から仕事なのか机に座って書類と向き合い始めた。
…私が無防備に寝はじめたら大体の男が手を出してくるんだけど…恭弥は一度もそういうことがないんだよね。
キスはもうしたけど、普通に重ねるだけのだし…何か、今までの男とは手の出し方が違う。
「……ねぇ、恭弥」
「ん?」
「私って魅力ない?」
「は?」
ごく至極真面目に聞いたつもりだったんだけど、恭弥にとっては不思議な質問だったらしく、とても怪訝そうな顔をされてしまった。
いや、だって、こんなに手を出してこないってことは女としての魅力を感じないからなのかなーって。
そんな感じのことを言うと何故か呆れ顔。え、何で!
「大切にしたいからに決まってるでしょ」
「………え、」
−−−あぁほらまただ。
また、心臓が跳ねて、顔が熱くなっていくのがわかる。
ぎゅうっと心の奥が絞られて、苦しくなって……
こんな気持ち、知らない。
だから、私はすごく不思議な顔をしていたと思う。
嬉しいような、辛いような、…気持ちがごちゃごちゃになっちゃうような、そんな感覚だったから。
例えるなら、そう、知らない土地で迷子になってしまったような……
そんな私に恭弥は小さく苦笑して私の頭を軽く撫でてくれた。
「僕のことを完全に好きになるまで、君に手を出すつもりはないよ」
「恭弥…」
−−−ほら、また好きになる。
恭弥は私が好きじゃないって思ってるけど、実際は逆。
初めて人を好きって思えてしまって、このまま好きすぎてしまったら、と思うと怖いの。
愛情の偏りを私は何よりも恐れてる。
そして、飽きっぽいはずの私が逆に捨てられてしまうことを何より恐れてるんだ。
…ねぇ、こんな私を笑うかな。
恭弥だったら「馬鹿だね」って優しく笑ってくれそうだよね。
「恭弥…好きだよ。あなただけが、一番好き」
するりと自然に出た言葉に恭弥が驚いたように目を丸くしたから、その様子が少し可愛くて思わずふわりと笑みをこぼす。
おやすみ、と小さく呟いて目をつぶれば「…これだから…」と恭弥の苦笑しながらの優しい声と軽いキスがふってきたのだった。
あなたに心は奪われてるの。
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