初めて男として意識した瞬間
髪を切った。失恋とかじゃなくてイメチェンで。
だって冬だし?何だか気分を変えておしゃれしたかったんだよね。
それなのに、このドS男は…!!
「失恋でもした?」
「そんなわけないでしょ!!」
真顔で聞いてきたドS男、雲雀恭弥。
憤慨して否定すれば興味を失ったとばかりに書類に目を落とす。
大体、私に恋人すらいないことをこの幼馴染はちゃんと知っているはずなんだ。
私に好きな人ができればその男の子を脅して私に近づけないようにしたり、少し仲良くなっていい雰囲気になった男の子ですらボコボコにして私に怯えて近づかなくなった。
そうして私の青春をことごとく邪魔してきたこの幼馴染。
それなのにいけしゃあしゃあと「失恋でもした?」ですって…!?
ぎろり、と睨むが恭弥はどこふく風。
…はいはい、もう慣れましたよ。どうせ私が睨んだって全然怖くありませんよね。
ふーんだ、と少しだけ拗ねつつ、少しだけ短くなって軽くなった髪の毛をくるりと触る。
…似合ってないのかな。今までロングで過ごしてきたし。
別に恭弥に褒め言葉を期待しているわけではないけれど、少しくらい感想を教えてくれたっていいのに。
「…なんで切ったの」
「え?あ、髪?…さぁ?なんか切りたくなったんだよね」
「ふぅん」
「どう?似合う?」
「前の方がよかった」
「うっ…うそ…」
はっきりと似合わないと言われて少しだけ落ち込む。
まさか似合わないとは…鏡でみる分ではいいと思ったのに……
いくら恋愛対象外の恭弥からであっても似合わないと言われると傷つくわけで。
小さくため息をつくと、恭弥はなぜか書類を置いて私の隣にどさりと座り込む。
何、と視線をあげると恭弥が優しく私の髪に触れてきて、思わず息をのんでいた。
「前の方が、こうして触りやすいから好き」
「…っ」
「けど、まぁ…今の長さの方が近くに行きやすいしこっちでもいいね」
さらさらと私の髪を優しく撫でながらくるくると弄ぶ恭弥の手つきになぜか心臓が高鳴る。
いやいやいや…!!なんで恭弥に私がどきどきしているの…!!
恭弥は幼馴染!別に深い意味はないんだから…!!
「姫の髪、綺麗だから切るのはもうこれで最後ね」
これでドキドキしない女の子は、きっといない。
初めて男として意識した瞬間
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