前世も来世でも、一緒にいたい
巫女として育ってきた私に自由がないことは知っていた。
でも、その中でも楽しく、幸せに暮らしていたと思う。
ーーー彼に会うまでは。
初めて会ったとき、なんて綺麗な人だろうと思った。
蜂蜜のように透明感のある髪、意志の強い真っ直ぐとした瞳、凛とした佇まいなのに纏う雰囲気は柔らかくて…不思議な人だとも思った。
彼は、遠いイタリアから来たマフィアだと言った。
マフィアって何?と聞くと町のみんなを守る自警団だと教えてくれた。
……彼に惹かれるのに、時間はかからなかった。
「ジョット!今日も来てくれたのね」
「当たり前だ。約束したからな」
「ふふ、今日は何のお話をしてくれるの?」
「そうだな…じゃあ、フランスの話はどうだ?」
「まぁ!素敵!」
俺が行ったのは、から始まる話はいつもキラキラと輝いていた。
時には大声で笑うような話、時には心温まる話、時には…心痛む話。
その話を聞くたびにどんどん…彼が好きになっていった。
「…いつも、俺の話ばかりだな。姫の話も聞きたい。姫の生まれは?」
「ここです。…巫女、なんです」
「ミコ?なんだ?それ」
「巫女は村のみんなの幸せを願う者です」
「へぇ…俺と同じだな」
「え…」
ふわり、と微笑まれて、ドキリとした。
そう言われるとは思わなかったから。
自分の力でみんなを守るジョット。
ただ、願うだけの私。
同じようで全く違うはずなのに、…ジョットが嬉しそうに笑うから、何も言えず…ただ「そうだね」と微笑み返すしかできなかった。
そんな、時だった。
ーー生贄の話が出たのは。
いつかこの日が来ると思っていた。
最近作物がとれなくて村の人達が飢えているという話も聞いていた。
…私は巫女。みんなの幸せを願う者。
儀式は明日だ、と言われ、部屋に閉じ込められる。
あぁ、…最期に…ジョットに会いたかった、な。
ジョットはきっと今日もあの場所で待ってくれているんだろう。
そして、儀式当日。
巫女の儀式服に着替えて、湖まで歩いていく。
みんなの幸せを願うために、私は今日死ぬ。
怖くない…といったら嘘になる。本当は手が震えるほど、怖い。
でも…みんなを守るため。…ジョットと、同じように。
ふと浮かんだ彼の顔にきゅっと胸が締め付けられたけど、…気づかないフリをした。
「姫!!」
「…っ、ジョット!?どうしてっ…」
「君を助けに来た!一緒に行こう…!」
「誰だ貴様!!巫女を守るのだ!」
「…っ今行く!!」
刀を抜く周りの男たちにジョットはグローブに炎を灯して男たちを伸していく。
その強さに息を飲んだが、数が多すぎて段々ジョットの息が上がっていくのがわかった。
このままじゃ、…ジョット、が…!
そう思ったら自然と「やめて!!!」と声をあげていた。…懐刀を、首筋に宛てて。
周りのみんなが動きをとめ、私はゆっくりとジョットの所へ歩いていく。
ジョットは私の手を握ると、一気に走り出した。
後ろで追え!!!という声が聞こえたが、私とジョットは手を離すことはなかった。
……ジョット…ジョット。
こうしてあなたと生きていることが、奇跡のよう。
あなたが、私の手を引いてくれているなんて…幸せ。
「…とりあえず、撒いた、な」
「…っ、ジョット…」
「ん?」
「私…」
優しく頬笑むジョットに、溢れそうな気持ちが込み上げる。
だけど、言葉にはならなくて…涙が溢れるとジョットは再び優しく笑うと私の頬を優しく撫でた。
好きだよ。大好きだ。
私の言葉を代弁するかのようにジョットは何度も好きだと囁き…唇を重ねる。
胸いっぱいに広がる幸せにもう、これ以上の幸せはないと思った。
けど。
「いたぞ!!」
「…っ、来たか…!」
「もう逃げられん。巫女は返してもらう」
「…っきゃ!ジョット!!っ離して!」
「姫!!」
どうやら追っ手は後ろからも来ていたようで、私は捕まって引き離されてしまう。
ジョットに手を伸ばしたけど、周りにいた男たちに襲われて動けなかった。
ダメ、ジョットを傷つけないで…!!!
そんな私の叫びも虚しく、ーージョットの背中に刃が突き刺さる。
「ジョット…っジョットーーッ!!!!」
「巫女を連れてゆけ!!!」
「いやっ…いやぁっ…!ジョットっ!離してッ!ジョット!!ジョット!!!」
「もうあやつは死んだ。諦めろ」
「っいやあああッ!!!!」
ーーこうして、私は…巫女として、死ぬことを選んだ。
本当は、ジョットが死んだあとを…追いたかっただけなのかもしれない。
死んでからわかったが、本当はあの時、ジョットは死んでいなかった。
雨月さんというお友達に助けられたらしい。
そのことだけが…救いだった。
ーーーそして、現代……
「でさー、明日ね、」
「もー本当好きだよね」
「当たり前じゃん!だからね、」
ある町の交差点……
その町は並盛という平々凡々な町。
その交差点で、二人は出会う。
今度は、…何のしがらみもなく。町の名前同様、平々凡々な学生として。
「「あ、」」
「…?どこかで、会いました、か?」
「え?あ、え?あ、うんっと…いや…、でも…」
「「どこかで会ったことがある気がする…」」
「…ふふっ!おかしいですね」
「うん、おかしいね。…でも、嫌じゃない。……俺、沢田綱吉」
「私、姫」
世界は廻る。
たくさんの困難が待ち受けていようとも…今度は絶対に……この手は離さない、と。
前世も来世でも、一緒にいたい
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