隣にいるあの人



「ごめん、…姫のことは妹ととしか見れない」


ずっとずっと、好きだった。初恋、だった。
小さい頃から私の隣にいてくれた2つ年上のツナ。
いっしょに笑って、…時には泣いている私を慰めてくれた。
優しくて、強くて、かっこいい人。
いつからか"お世話をしてくれるお兄ちゃん"から"男の人"としか見れなくなった。

高校生になって、勇気を出して告白した。
…だけど、結果は惨敗。困ったような顔をしたツナは"妹としか見れない"と現実を突きつけた。



「好き、って…言わなきゃよかったかな…」



今さら後悔しても遅い。わかっているけど、せずにはいられない。

ぽろぽろと流れる涙を拭きもせずにいると「姫?」と名前を呼ばれ、ゆっくり顔をあげる。




「…雲雀、先輩」



涙を流す私に目を丸くした雲雀先輩がそこに立っていた。

泣かれているのを知られたくなくて(遅いかもしれないが)すぐに手で涙を拭ったが、時すでに遅し。
雲雀先輩は空気も読まずに私の腕を掴む。…そして、泣きはらした私の顔を真っ直ぐと見つめた。



「…、泣いてるの」

「……見てわかりませんか」

「あの男のために?」

「あの男とは」

「沢田綱吉だよ」

「……………」

「沈黙は肯定と受けとるよ」

「…雲雀先輩には関係ないです」

「まあね。…だけど、気にくわない」



雲雀先輩は乱暴な言葉とは裏腹に優しく私の涙を親指の腹で拭う。
雲雀先輩、と彼の名前を呼ぶと、珍しく雲雀先輩は優しげな笑みを浮かべた。



「僕の彼女になったら?」

「え…」

「ていうか、好き」

「え、」

「だから、君が好きなんだけど」



あっさりと放たれた言葉にぽかんと口を開ける。
何その間抜けな顔、と笑われて、本当にこの人は私のことが好きなのかな、なんて考える。

でも、笑う顔が見たことないくらい優しいから、…あぁ本気なんだと視線が少しだけ下がった。

恥ずかしさと嬉しさと…少しだけ罪悪感。



「雲雀先輩、私、」

「いいよ、返事は。…とりあえず僕が君の側にいたいだけだし」

「雲雀先輩…」

「ま、とりあえずデートだね」



断ろうとした私に雲雀先輩は再び手を繋ぐと歩き出す。

どこ行くんですか!
だからデート。
いや、場所!てかデートって、
まずは服ね。
え!?
その服ダサいよ。あと髪もね。
どんだけ私のこと貶してんですか!



「姫はかわいいよ。…それを教えてあげる」



おしゃれしたら気分も変わるでしょ、と言われてはっとした。

…そういえば、私ふられたんだった。

長年の初恋がやぶれたのに、どうしてか心は軽い。
いや、理由はわかってる。

すべては…私の視線の先で手を繋ぎ、私の心を掻き回した、……雲雀先輩のおかげ。

まだ、心には綱吉がいる。
だけど…今はこの手を離したくないと思う私は、ずるいのかな。




隣にいるあの人


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