ずっとずっと、君だけを見ていた
初めて会ったのは私が中学生、恭弥が小学校1年生だった。
恭弥は小さいときから落ち着きはらっていて、大人びているなぁと思っていた。
小学校3年生くらいまでは「恭ちゃん」って呼んでも嫌々ながらも返事してくれていたのに、最近では「恭弥」って呼ばないと返事もしてくれない。
昔は頭撫でても微かに嬉しそうにしてたのに、中学生になったからか頭に手を伸ばすと睨んでくる。
大学生になった私にとってまだお子ちゃまなのに……
あーあ、かわいいころの恭弥に会いたい……
「またそんな薄着して…風邪ひくよ」
ため息をつきながら、私に着ていた学ランを羽織らせてくれる。
とたんに温かくなる体。…まるで恭弥の温もりが伝わってくるようだった。
「ありがとう、恭弥」
「…今日、背が低くないかい?」
「え?あ、うん。今日はローヒールだから」
「へぇ。かわいい」
「え!?」
な、ななな何!?恭弥、何て言った!?
いやいや!私の気のせい!気のせいよね!?
「あ!雲雀さーん!」
「……」
現れた見慣れない女の子。
並中の制服を着てるから、同じクラスの子とかかしら?
女の子はニコニコしながら恭弥に近づくと、ぎゅっと抱きついた。
…が、しかしすぐに腕を振り払い、女の子を引き離した。
あらあら…恭弥、女の子怒ってるよ……
「もー!こんなかわいい女の子が抱きついたのに何もしないなんてありえないですよ!男としてどうなんですか!」
「何も感じないね。むしろ嫌悪感」
「えええ!?なんでそうなるんですか!?…っもう!いいです!」
雲雀さんのバカー!と叫んで女の子は走ってどこかに行ってしまう。
…恭弥にバカと言えるとは…うーん、恋する女は強い……
「…恭弥…かわいそうだよ」
「姫の方がひどい」
「え!?どうしてそうなるの!?」
「…姫なら抱きついた瞬間、押し倒してる」
「…え…」
つ、疲れてるのかしら……
心臓がどきどきするし、息できない…っ
「…?顔色悪いよ」
「あ…うん…ちょっと疲れてるみたい…」
「大丈夫かい?」
心配そうに見つめる恭弥。
…う…なんかそんな恋人を心配してるみたいな目で見られると……何かさらにどきっとしちゃうじゃん…!
大丈夫!と慌てて言ったせいか、足が絡まってしまう。
「きゃっ」
「…っと…」
絡まった足はそのままバランスを崩してしまって、倒れそうになった私の体を恭弥が抱き止めてくれる。
ありがとう、と伝える前に、恭弥に何故か強く抱き締められた。
しかも友達同士が抱き締める感じじゃない。
腰に手が回って、…まるで、恋人みたいな、
「…っ、恭弥…?…も、もう…どうしたの?あ、あ!わかった!甘えたい気分?そうよね、恭弥もまだ中学生、」
「中学生の前に、男だよ」
その鋭い眼差しは、…本当に、"男"だった。
ずっとずっと、君だけを見ていた
もう弟から卒業する。
ーー君が、唯一の女の子として、好きだから。
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