本当の気持ちに蓋をして。
もう少しだけ、あなたに会うことができていたら…私は違う道を歩いていたのかな。
「一緒に帰ろう、姫」
「うん」
いいなー姫はかっこいい彼氏に愛されてて。
そうやって悔しがる友達の言葉に苦笑しながら教室を出ると優しい笑顔を向ける綱吉が待っていた。
お待たせ、と言うとそんな待ってないって、と綱吉はいつも笑う。
−−−半年前にこの学校のモテ男の一人である綱吉に告白されて付き合うことになった私。
誰もが私を羨んだし、モテるのに誰よりも優しくて大切にしてくれる綱吉に私も段々惹かれて、好きになった。
愛し、愛されて、端から見たら本当に幸せなカップル。
私だって幸せのはずだった…のに。
「あ、雲雀さん!」
「…!」
綱吉がひきとめる声にどきり、と私の胸が高鳴る。
それと同時に視界に入った雲雀さんの姿に胸が熱くなっていくのを感じた。
呼び止められた本人は無関心な目をしながらこちらにきて「何群れてんの?」の一言。
その言葉に苦笑しながら綱吉は一緒に帰ってるだけですよ、なんて答えていた。
「…君、そういえばこの前リボン忘れてなかった?」
「あ…っ」
雲雀さんの視線が私に向いてどきり、と大きく心臓がはねる。
ダメ、ダメだ…冷静にならないと…!
早まる鼓動にそう言い聞かせて私は小さく苦笑を作った。
「…すいません、忘れてました」
「風紀が乱れるから気をつけてよね」
「はい」
そのあと綱吉と雲雀さんが何か話していたが私の耳には届かず。
ただ、溢れそうな気持ちに蓋をして雲雀さんを極力見ないようにした。
…私は綱吉が好きなの。
−−−他の人を好きになるなんて、ありえない。
そうだよ、こんなに優しくしてくれる綱吉を裏切るなんてできない。
雲雀さんが好き、だなんて…そんなの、違う。
そう何度も言い聞かせた。
本当の気持ちに蓋をして。
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