「…何がだ」

「ん?ユウちゃんがどうしてそんな中途半端な強さなのかわかっただけよ」

「っ!てめぇオレをバカにしてんのか!!??」


食堂中に神田の怒鳴り声が響き、波打ったように静かになる。
しかし、レティシアは気にしないとばかりにサラダを食べ続けている。

みんなはただただ固唾をのんで見守るしかなかった。



「バカにはしてないわ。ユウちゃんは確かに強いかもね。
でもその強さは本当の強さじゃないと思っただけよ」

「どういう意味だ!?」



神田は少なくても自分は強いと自負している。
驕りではない。今までの経験をもとにした自信だった。

でもレティシアはただ冷めた目で神田を射抜いた。



「哀しいわね、神田ユウ。自分に足りないものもわからないなんて」

「…っ!!」



神田の中に自分でも何かわからない怒りがあふれる。

何だ。なんでこんなにも苛々する?
オレに足りないものなんてない。
わかってるはずだ。

なのに何故こんなにもコイツの言葉に苛々する!?



「それがわからないうちはユウちゃんのままね」



ごちそうさま、と言って席を立とうとする。
しかし一人のファインダーが立ちふさがっていた。

レティシアは立ちふさがったファインダーの目を真っすぐ見つめた。



「…何かしら?」

「キミ、昨日入団した子だよね?神田は仮にも先輩だよ。もうちょっと弁えたら?」



青い髪にずんぐり目。童顔と背の高さから幼く見える。
きっと言葉の通り礼儀正しく、正義感ある子なんだろう。

しかしレティシアはその言い方に少なからずむっとした。

この子が言っていることは確かに正しい。
でもそれは新しく入団した子である場合、だ。レティシアには当てはまらない。



「弁えるのはあなたの方よ。私は十年以上ここにいる。
新参者と間違うなんて失礼にもほどがあるわ。どいてくださる?」



威圧感がダグに一気にかかった。
強い者の圧倒的な威圧感。それは、身の竦んでしまうような威圧感だった。

正義感の強いダグでさえ少し身をひいてしまう。



「どうもありがとう。でも私は真実を述べただけよ」



凛とした目でダグを見据える。
ダグはレティシアの目が澄んでいることに気づき、そっと驚きで目を見開いた。

レティシアは無神経に、神田と壁を作るために言葉を放ったわけではない。
ただ神田のために、そして神田のことを期待して苦言を呈したのだと感じた。



「あなたは人を見る目があると思うわ。その澄んだ目、私は嫌いじゃない」


ダグの気持ちが動いたことに気付いたのか、レティシアは少し笑ってカウンターへ行く。



「ジェリー、ごめんなさいね。食堂が変な雰囲気になっちゃった」

「いいのよ。気にしないで」

「ありがとう」


感謝の気持ちを込めて、レティシアは少し微笑んで食堂をでていく。
そうしてようやく緊張感が途切れ、食堂に活気が戻ってきた。

――しかし、すこぶる不機嫌な神田が残されたのだった。


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