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三日後―――34回目の10月9日
「はーい!いらっしゃい、いらっしゃーい!」
元気のいい声と共にジャグリングするカボチャ。
もちろんその凄さからこどもたちの注目の的になっていた。
その隣で本物の魔女のごとくチラシを配っている女性。
「ピーテル劇場のホラー演劇。「カボチャと魔女」は本日公演〜ん♪」
「チケットいかがですか〜?」
「ごくろーさんごくろーさん!休憩していいよ」
わははと豪快に笑う恰幅のいいおじさん。
どうやらアレンの大道芸とミランダのリアルな魔女が好評でチケットの売り上げがいいらしい。
この調子でいけば正社員にする、という団長の言葉にアレンの表情が明るくなった。
「ホントですか!?」
「アレンくん」
アレンくん、と呼ばれ、ふり返るカボチャ―――アレン。
そこにはティムを連れたリナリーとレティシア。
顔が見えないように2人ともフードを被っていた。
丁度、休憩になったアレンは2人を連れてお店の裏へ行く。
「どう?この仕事は」
「うまくいったら正社員にしてくれるそうですよ」
「ホント!?」
「よくそこまでこぎつけられたわね」
散々考えた結果、アレン達はミランダの強い絶望感(マイナスパワー)にイノセンスが反応したと推測を立てた。
それならば「再就職してミランダさんの気持ちが前向き(プラス)になればもしかしたら奇怪が止まるかもしれない」…という結論に達し、今に至る。
「アクマもあれから音沙汰ないし…今のうちに決めたいですね」
「うん。そうね。この三日間ですでに5件クビになってるし…」
視線を二人してそらす。
微妙な空気が漂ったが、レティシアが微笑して言い放った。
「私はこれもある種の才能だと思うわよ」
「そんな才能ほしくないですよ…」
「それにしてもアレンくんって大道芸上手だね」
そうリナリーが褒めるとアレンは逆立ちをしながら大玉の上に乗っかる。
そのバランス感覚は素晴らしいもので、身に染み込んでいるようにも感じた。
「僕、小さい頃ピエロやってたんですよ」
「へぇ。初耳だわ」
クロスがさせた、ってわけじゃなさそうね。
ってことは…彼、か。
「育て親が旅芸人だったんで食べるために色んな芸をたたき込まれました。
エクソシストになってそれが活かせるとは思ってませんでしたけど」
「じゃあ色んな国で生活してたんだ。いいなぁ」
「聞こえはいいけどジリ貧生活でしたよ〜」
「私も放浪したからね。いいことばっかりじゃないってことわかるわ」
色んな人がいた。
優しい人、親切な人、明るい人……面白い人、お人好しな人。
逆に最低な人たちもいたけど…、…ブローカー…とかね。
でも放浪したおかげで…ティキに会えた……―*
「リナリーはいつ教団に入ったんですか?」
アレンの質問が耳に入り、レティシアは意識をリナリーに向けた。
リナリーの入団はリナリーにとってあまりいい思い出ではないことを知っていたから。
心配そうにリナリーに視線を向けると、リナリーは少し哀しそうに話し始める。
「私は物心ついた頃にはもう教団にいたの。
私と兄さんはね。両親をアクマに殺された孤児で……
私がこの『黒い靴(ダークブーツ)』の適合者だとわかってひとり教団に連れていかれたの。
唯一の肉親だった兄さんと引き離されて自由に外にも出してもらえなくて、正直初めはあそこが牢獄のようだった」
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