「僕らはさぁ人類最古の使徒、ノアの遺伝子を受け継ぐ『超人』なんだよねェ。お前らヘボとは違うんだよぉ」



アレンの左目めがけて振り下ろされた杭。

何の躊躇いもなく、無表情に―――



「ぐああぁああああぁ」

「アレン!!!」



レティシアはすぐにアレンに駆け寄り、傷を見る。

完全に潰されている。
これでは失明を避けることはできないだろう。
命を奪ったわけではないが、戦士として生きているアレンにとっては大きなハンデとなる。

大きな傷を負わせたことで、キッとレティシアはロードを睨んだ。



「プッアハハ!キャハハハハ」


無邪気な笑い声。
ただただ楽しそうに、ただただ嬉しそうに。…ただただ嘲笑うように。


「キャハハハハ」

「ロード!仲間を傷つけるのは許さないって言ったでしょ!?」

「…っ!!!」

「ひいぃ…っ」

「ちょっとくらいいいでしょぉ?
僕はヘボい人間を殺すことなんて何とも思わない。
ヘボヘボだらけのこの世界なんてだーいキライ♪
お前らなんてみんな死んじゃえばいいんだ。
神だってこの世界の終焉を望んでる。
だから千年公と僕らに兵器を与えてくれたんだしぃ」

「そんなの神じゃない…本当の悪魔だ!!」

「どっちでもいいよぉんなモン」


痛みをこらえながら勢いよく走り出すアレンの前に三体のアクマが立ちはだかる。
自分を庇うことをわかっていたのか、ロードは「僕は殺せないよぉ?」と余裕の笑みを浮かべた。

アレンを襲う、三体の攻撃。



「アレンくん!」

「その体でアクマ三体はキツイかぁ」



チラとロードはミランダをみるとミランダはびくっと震える。
視線を向けられた、ということは、次は自分だということ。
何をされるのかと恐怖に歪むミランダにロードはにやりと笑う。

これから起こることを予想してレティシアがやめて!!と叫ぶが遅かった。



「お前もそろそろ解放してやるよぉ」



無数の尖った蝋燭がミランダに向かっていく。
目をつぶり、ミランダは死ぬ覚悟をしたが…痛みはない。

庇うようにアレンが覆い被さり、レティシアがそれを庇うように守っていた。



「レティシア!?」



ロードが驚いたように彼女の名前を呼んだ。
まさか、一人の女のために自分を傷つけるようなことをするとは思ってもいなかったのだ。
何故ならば彼女は、選ばれた者。人間一人の命とは比べ物にならないほど、重要な役割をもった者。
自分たちと同じ、もしくはそれ以上の立場にあるレティシアが人を庇うとはロードは思っていなかったのだ。

レティシアはゆっくり立ち上がる。
無数に切り傷ができているがレティシアはまったく気にしていない。



「おいたのしすぎじゃないのかしら?ロード」

「レティシア…」

「言ったわよね?傷つけるのは許さないと」



大きな、今までに感じたことのないくらいの殺気が放たれる。
ロードはその異常なまでに大きい殺気におされ、ざわりと背筋が凍った。

レティシアの体が強く光る。…それは、イノセンスを発動させた証拠。

すると、みるみるうちに傷が綺麗になくなっていく。
イノセンスの力の大きさと殺気にロードは冷や汗をかきながら一歩後ずさった。



「(僕が…怖いって思ってる…)」



アレンもその殺気に目を疑いそうになった。

あれが…レティシア…?
いつも明るくて、なんでも笑顔でかわすレティシアなのか…?


カツっとブーツ音を響かせ、レティシアはアレンの元へ歩く。
アレンは気力をふりしぼってミランダの手に刺さっている杭を引き抜いた。



「モヤシくん、大丈夫?」


倒れそうなアレンの肩を支え、レティシアはアレンに囁く。
アレンの意識はすでに途切れ途切れであり、アレンは「…レティシア…?」と掠れた声で問いかけた。



「えぇ」

「…よかった…無事だったんですね…」

「…ごめんなさい…傷つけられるまで止めないで…」


色々聞きたかった。
なんでロードと一緒にいたのか、とか。
ロードと一緒にいて、何故無事で、「天使様」と呼ばれているのか。

でも今は聞けない。
こんなにもレティシアが苦しそうな顔をしてるから。



「アレンくん…死なないで…」


人が死ぬのを恐れるように繰り返し死なないで…と呟くミランダ。
そんなミランダを安心させるようにアレンは精一杯の笑顔を向ける。



「だ、大丈夫…」


ミランダのふるえが、止まった。


「何だ、メス?何やってんだ〜?」



ぎゅっとアレンとレティシアを抱きしめるミランダ。
それは、二人が自分にしてくれたこと。
…何もできない私だけど、せめて、自分の身を挺しても守りたいと、思ったのだ。



「は…はは…ホント何やってんの私…、でも…でも…」

「人間に何ができんだよ〜〜」

「でも…」


三人を包み込むように光る輝くミランダの時計(イノセンス)。
それは、間違いなくミランダがイノセンスを自分の意志で発動させた証拠だった。



「ようやく認めてくれたのね…イノセンス」


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