ハラハラと雪が落ちてくる。
どこまでも儚い雪は頬に当たるとゆっくりと融けていった。

レティシアはそんな雪の冷たさを感じられるようにそっと目をふせた。


季節が変わるたびにティキのことが思い浮かぶ。
それだけ自分にとってあの一年は大切なものだった……



『寒いね』



雪の降る中、ひとりうずくまっているとティキはその隣に座った。

レティシアは何も言わない。ただ俯いて、雪を感じていた。



『風邪ひくよ?』

『…ひかない』

『でもこんなに体が冷たい』



ぎゅっと抱きしめられると心地の良い体温が服ごしに伝わる。
もう感覚がなくなるほど冷たかった体がそこだけ感覚を取り戻す。

じんわりと温まる体にレティシアはそっと息をついた。



『ティキ…温かい…』

『だってオレ、レティシアを暖めるために温かいんだもん』

『何…それ』



あまりにも馬鹿らしくも優しい言葉に思わずクスッと笑みが漏れる。
俯いているからわからないはずなのに、どうしてか隣でティキが微笑んでるように感じた。



『やっと笑った』


優しい瞳、声、手、言葉。

すべて、守りたいと思った。


『…ありがと、ティキ』



小さく息をついて、そっと目を開ける。
目の前にはあの時とは違う風景が広がっていて、思い出していた温もりは雪のように融けていった。

懐かしさからか、優しい思い出に一筋の涙が頬を伝った。

ティキとの思い出はいつも優しい。
嫌な思い出なんて…一つもなかった。

自分が何者か忘れるほど……



「ティキ……」



小さく彼の名前を呼んだ―――


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