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戦闘の後独特の静けさがあたりを包む。
アレンとラビはあまりのアクマの数の多さに戦闘疲れで大の字になり空を見上げていた。
しばらくは激しく肩を上下させていたが、ようやく息も整ってきたころ、ラビはアレンに話しかけた。
「何体壊った?」
「30…くらい」
「あ、オレ勝った。37体だもん」
もしかしたらアレンの方が破壊しているかもしれない微妙な数にアレンは大人げないと思いつつもムッとする。
ちゃんと数えていれば比べられたものの、今となってはわからない。
それなのに勝った、負けたと勝負をつけられたのだから妙な自尊心が傷つけられる。
だからと言って勝ち負けなんてわかんないじゃないか、というのもさらにプライドが傷つけられる気がして、少しだけ黙ったあと「そんなの数えませんよ」と不貞腐れた。
「オレ、なんでも記録すんのがクセなのさ〜」
「さすが次期ブックマン。でも体力なさすぎ」
「レティシアの場合ありすぎんさ」
ユウに一日中追いかけられても全然疲れてないし。逆にユウの方がバテてるさ。
オレなんかユウに追いかけられた日にはボロボロになんのにさ……
そう呟くラビに対してレティシアは「普通よ」とけろりとする。
疲れて起きあがる気力もない2人に対して息切れもおこしていないレティシア。
ただいつものように壁に寄りかかっているだけ。
…これが「普通」なんてありえないとこればかりはアレンもラビも同時に思った。
「何言ってるの?こんなにか弱い乙女なのに」
「…そのか弱い乙女は一体何体壊ったんさ?」
「そうねぇ…ざっと100体くらいじゃない?」
「「うそぉ」」
どこがか弱いんさ!?オレらよりタフじゃんよ!
…なんて口にした日には次の日の出は拝めなくなるだろう。レティシアによって。
しかし心の声すら聞こえてくるのがレティシアだ。
「ラビ、今失礼なこと考えたでしょ。ユウちゃんなら少ねぇなっとか言うんじゃない?」
「ユウと比べんなさ〜…合わせて170か……単純にオレらだけに向けられた襲撃だな。
お前とリナリーが負傷してるのを狙ってか…はたまた何か別の目的か…」
「!大丈夫かな病院…」
起きあがろうとしたアレンに左腕が痛みを訴える。
思わず「痛て!!」と声をあげるとラビが小さく首を傾げた。
「ダイジョブか?」
「寄生型だからね。本人の疲労が腕にもかかるんでしょ。ホント、寄生型って大変ねぇ」
人ごとのようだがレティシアもちゃっかり寄生型だ。
「まだ完治してねんだろ、その左」
「まぁね。僕もラビ達みたいに装備型の武器がよかったな。寄生型なんてフベンなだけだよ」
「私も寄生型だけど?」
「レティシアって寄生型だったんですか!?
ていうか僕、レティシアが発動してるとこ、見たことないんですけど」
「あ、オレもないさ〜」
「なんで!?」
ラビはレティシアと結構長くいるんじゃないんですか!?と言葉を続けたが、ラビは何でもないように肩をすくめた。
「だってオレ、任務レティシアと一緒になったことないんよ」と。
その言葉にアレンは怪訝そうに眉を顰めた。
「え!?じゃ…」
「まぁ大体ユウちゃんとペアか単独ね」
「神田とペアですか!?」
「なんていうか…やりやすいのよ。うん」
ていうか楽しいのよねぇ。
アクマ倒しながらユウちゃんてば器用にも私と言い争いできるんですもの。
それになにより誰よりも単純でからかいやすい。
…と、何とも理由は不純なものだったが。
「や、やりやすい…」
しかしアレンにとってやりやすいというのは“任務がうまくいきやすい”という意味にとったらしい。
レティシアの“やりやすい”という言葉に思わずアレンは顔を引きつらせていた。
あの神田とやりやすい人なんていたんだ……と声には出せなかった。
その隣でラビは槌の先を地面に深く突き刺す。
「…病院てあっちの方だよな」
「え…うん、多分」
「ここ握って。んでレティシアは…」
「私は嫌よ」
「え〜…レティシアを抱きかかえようと思ったのにぃ…」
「セクハラ。それに走っていった方が私は速いの」
それだけ残してレティシアの姿はなくなり、見えなくなる。
よほどラビの槌には乗りたくなかったらしい。
「速っ!じゃ、オレらも行くか」
「何?」
「大槌小槌…伸!」
「い゛っ!?」
急に伸びる槌の柄。
しかもその勢いはかなりのもので、まるでシートベルトのないジェットコースターのようだった。
初めての感覚にアレンは叫び声をあげるが、ラビはお構いなしに病院まで伸をし続ける。
ぎゃあああというアレンの断末魔(?)を聞きながらレティシアは小さく「ご愁傷様」と呟いた。
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