「オレっすか」



びょおおっと虚しく風が鳴る。

先ほどまで一緒にいたアレンが行方不明なのだ。
レティシアに背中を押されてリナリーと仲直りしに行ったのはいいものの、そこから帰ってこない。
リナリーは駅でアレンと話した後、先に汽車に乗ったのでアレンが乗ったところを見ていないらしい。

ラビは心底呆れた顔をしていたが、リナリーは心配そうな顔、ブックマンは当然じゃ、という顔、レティシアに至っては完全にこの状況を楽しんでいるようで笑い続けている。



「お願いラビ!アレンくんきっとさっきの駅で乗りそびれちゃったんだわ。戻って捜してきて!」



どこにもいないのーと言うリナリーの隣にはアレンのゴーレム、ティムキャンピーが飛んでいる。
主はいないのに、なぜかゴーレムはいる…どういうことだろう、この状況は。



「ガキかあいつは…」

「ガキね」

「行け。今ならお前の如意棒でひとっ飛びだろ」

「槌だよパンダ。押すなボケ」



今にも蹴り落とそうとするブックマンの足をラビは笑顔ながら怒りつつ片手で防ぐ。
それでもぐいぐいっとブックマンは足の力を込めている。

しかし、ラビがリナリーの(いや女子全般の)お願いに弱いのは周知のこと。
嫌だ、とは言い切れず、ラビはん〜っと渋った。



「いいけどさぁ〜なぁんかヤな予感すんなぁ〜」

「ふぅん…なんだか面白そうな予感ね!」

「いや、だからヤな予感って…」

「ラビットのヤな予感は私にとって面白そうな予感なのよ!」


キラキラと目を輝かすレティシアにこれ以上誰が突っ込めようか。
ラビは「そうっすか…」と小さく呟き、さらに遠くを見つめた。



「そう。てわけで私も行くわ」

「レティシアも行くんか!?」


さっきまでの低いテンションはどこへやら。
先ほどのレティシアのように目をキラキラさせて、もう行く気満々だ。



「じゃ、レティシアは、」

「手を離しなさい。私を抱きかかえようなんて100万年早いわ」

「そうよラビ!」

「馬鹿者!レティシア嬢に手を出すな!」

「いてっ!…ちぇ〜…じゃ、行くぞ!」



その夜の月には槌に乗った兎と美女が映ったそうな……

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