「……」


帰りの汽車の中。静かな空間にレティシアの寝息だけが聞こえてくる。
疲れているのかどうなのかはわからないが、ただ穏やかな顔をして。

神田はその寝顔を見ながら自問自答する。


どう思う。
-----レティシアに言われたことの意味は。

何がオレに足りない?-
-----わかるはずねぇ。

ならレティシアの戦い方は?
------すげぇ。認めたくないがレティシアは強すぎる。
------でも…泣いてるように見えた。

それは気のせいじゃねぇのか?
------気のせいじゃねぇ。涙は流してなかった。
------でも何か悲しいものを感じた。



「…ん…」



レティシアからすぅっと静かに涙の雫が落ちる。
すると目が覚めたのか、ゆっくりとまぶたがあがった。



「…あらら」


また涙が出ちゃったのね。

何故涙が出るのかはわからない。
でもアクマの破壊をして寝ると、起きたときに涙が伝っている。

不思議そうに涙の雫を眺めていると急に声がかかった。



「…おい」

「ん?なにユウちゃん」

「ちゃん付けすんな。…てめぇはオレに何が足りないと思った?」

「………」



少なからずレティシアは驚いた。
あのプライドが高そうな神田が自分に答えを求めている。

レティシアは少なくとも自分に聞いてくることはないと思っていた。
きっと神田はずっと自分で答えを見つけ出そうとすると。

しかし、神田は答えを求めてきた。それはきっと、自分の戦いを見て何か感じるものがあったからだろう。
ならばちゃんと応えたい。彼の真摯な目にレティシアは優しげに目を細めた。



「…ユウちゃんにとって仲間って、何?」

「あ?」

「人間って、何?教団の人達って、何?恋人って、何?」

「…?」

「大切な人って、いる?」



レティシアの質問が重くのしかかった気がした。
だからだろうか。レティシアの質問に対して神田は黙り込む。

考えたこともなかった。

仲間といえるやつらはごく少数の奴等だけだ。
ならそいつらのことどう思っている?



「…ユウちゃんは、自分の本質を見抜けてない。それに…ユウちゃん大切な人がいないでしょ?」



いない。自分にとって大切だと思える奴なんて…いない。

オレはあの人を見つけるために生きてるから。



「人は大切な人がいてこそ強くなれる。
ユウちゃんは確かに強いわ。でもそれは脆い。
大切な人がいればどんなことでも乗り切ろうとするもの。
ユウちゃんには…それが足りない。私はそう感じた」



でもそれは自分にも言えること。
私には本当に守りたいと思った人はかつて一人しかいない。

でも今はそれ叶わないことだ。

(違うわね…願っては、いけないことかしら…)


ゆっくりと力強く言い切った。まっすぐ神田を見つめて。



「……」

「まぁ気にしないで。ユウちゃんにもいつかそんな人が現れると思うから」



さっきまでの真面目な雰囲気からレティシアが笑ったことで軽い空気になる。

神田はあぁと心の中で納得した。

こいつはオレの嫌いなタイプじゃなかった。
レティシアは本当は戦いが嫌い。

だからあの時あんな顔をした。

甘い奴だと思っていたら少し大人びてて何か悟ってるよう。
こいつの笑顔の奥には諦めたような…しょうがないと思っている儚いものを感じる。

オレが苛々したのはコイツに何もかも見透かされてるようだったから……

でも一緒にいて安心する…その安心することがオレには恐かったんだ。



「…レティシア」

「…!」

「お前なら名前で呼んでやるよ」



にやりと笑った神田にレティシアはぽかんとしたが、次第にクスッと笑みを漏らした。



「光栄ね」


今のユウちゃんの顔…何かわかったような笑みね。

掴んだのかしら…大切なことを……*―


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