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目の前の出来事が信じられない二人。
レティシアは何かを見定めるようにじっとクロウリーを見つめる。
「ウソだろ…」
そう呟いたのは無意識だった。
しかし、彼はわざと見せつけるようにじゅるりと音を立てる。
こちらを意識しているのか、歯を突き刺しているところを見せつけて吸いあげる。
まるで本物の吸血鬼なのだと、証明しているように……
「じゅるるるる…ゴクン!!」
そんなデスグロスとも言える場面をただ顔を真っ青にして見つめるアレンとラビ。
見せつけられた村人達は明日は我が身という言葉が浮かぶ。
その瞬間、一気に村人たちに恐怖が襲ってきた。
一人、また一人と後ずさっていく。
「うわ…」
「わあああ…っ」
「うわあああ!!」
「死ぬのは嫌だぁ――!!」
逃げまどう村人達。
ある村人は人を押しのけ、ある村人はこけながらも足を動かし、ある村人は涙を流しながら走り出す。
その中でもアレンとラビはまじめな顔つきで睨むだけ。
ここまで証拠が在れば信じられずにはいられない。
――――吸血鬼の存在を。
ラビとアレンは同時にイノセンスを発動させる。
発動したイノセンスを向けるのと同時に、クロウリーもフランツをくわえながら向かってくる。
しかしレティシアはイノセンスを発動させずに後ろに後退した。…腑に落ちないことがあったからだ。
「どうします?」
「どうってなぁ…噛まれたらリナリーに絶交されるぜ」
レティシアが噛まれたらあの世行き決定だし。
「ていうかなんでレティシア、後退してんの?」
「ちょっと…ね。ま、アクマじゃなさそうだし二人でがんばってね」
「「(生け贄だ…!)」」
「とりあえず吸血鬼(カレ)にとっては大事な食事でも村人を殺させるわけにはいかない!」
アレンの銃形イノセンスを地面に向かって発砲し、クロウリーの視界を遮る。
慌ててクロウリーが後退するとラビの声につれて大きくなる槌が砂埃を切り、クロウリーを襲った。
「どうだ!?」
「残念。惜しい」
砂埃が晴れるのと同時に衝撃的な映像が見える。
歯で支えられているラビの槌。
どう考えてもラビの槌は1トン以上あるだろう。
それを歯だけ支えているのだ。
アクマだったら確実につぶれているところなのに。
「うそぉ?すげェ歯だなオイ!」
「驚異的ね…」
そのままクロウリーが首を振って投げ飛ばされる。
ラビが地面に叩き付けられているとそちらに気を取られていたのか、地面から振動が伝わっても動くことができなかった。
クロウリーの足元が盛り上がり、アレンの腕がクロウリーを捕獲する。
「捕まえた。おとなしくしてください」
脅しのためにアレンの指をクロウリーの首元にあてた。もし動けば、命はない、と。
しかし、そんなアレンの脅しにクロウリーは顔を顰めるどころか、何故か笑い出したのだ。
「あらあら。何が可笑しいのかしら?」
「奇怪な童共だ。私にムダな時間を使わせるとはな。お前らも化物か!あぁ?」
「エクソシストです」
「こんばんは、私は忙しいんだ。放せや」
その言葉と同時に思いっきり噛みつかれた。
もちろん寄生型のイノセンスであるアレンは精神が繋がっているので痛みを伴う。
レティシアも同じく目を見開き驚いていた。
「これは…」
対アクマ武器が傷ついてる…!?
アクマの弾丸でも傷一つつかないほど頑丈な対アクマ武器。
もし傷がつくとしたら…一つしかない。
思わずニヤリと笑ってしまった。
そういうことね、クロス……
あなたが私達をとどまらせる理由がわかったわ。
ついには傷をつけるだけではなく、血を吸い始められる。
「わ―――っアレン!!」
「うっ…、…げぇぇええ苦い!!」
突然そう騒ぎ出したのでアレンは手をつい離してしまった。
吐きながら森の中へまぎれていくクロウリーをただ黙って行かせてしまう。
げぇえええと言う断末魔(?)が響く中アレン達は呆然。
アレンの指にはくっきり歯形がついていた。
そこからただ一つ分かること…それは……
「「絶交されるな(わね)アレン…」」
でもある意味レティシアが噛まれなくてよかった……
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