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「おはようラビット」
「兎じゃないさっ!」
食堂でサラダにパクついていると赤い髪がふわりとゆれる。
顔をあげるとニコッと笑ったラビの顔。そして先ほどの会話に戻るのだ。
いいじゃない、と笑うレティシアにラビは机に乗せていた顔を上げるとレティシアの顔を見つめた。
「任務に行ったって本当さ?」
「えぇ、行ったわ。簡単だったけど」
「…どんな任務だったんさ?」
「アクマの破壊」
矢継ぎ早に尋ねられる質問にレティシアは淀みなく応えていく。
好奇心が強いのか、ブックマンの性なのか。
何体くらいだったか、というラビの質問に「忘れたわ。一々数えてないしね」と肩をすくめた。
ラビはふぅん…と曖昧に頷いたが、再び質問したいことが浮かんだのか身を乗り出した。
「誰とだったん?」
「ユウちゃん」
即答すると「ユウと!?」とさらに身を乗り出された。
…そんなに驚くコトかしら、とサラダを食べながら考える。
「そうよ。結構楽しかったわ」
「楽しい!!??」
「そう。楽しかった。ユウちゃんの意外なトコ見れて」
「…へぇ。そうなんさ」
あのユウの意外なトコかぁ…気になっけど教えてくれなそうだな。
そんなことを考えているとレティシアはキュウリを口の中に放り込むと小さく首を傾げた。
「それで?ラビットはどうしたの?」
「オレ兎じゃないさぁ…」
「違ったの?」
なんてとぼけるが当然違うことくらいわかっていた。
でもいいじゃない、兎で。ユウちゃんも確かそう呼んでたわよね。
わざとということがわかっていないのか、ラビはさらに落ち込む。
「違う…あ、そうさ。レティシアって何歳なん?」
「レディに失礼と思わない?」
ちょっと睨むとなぜか目を泳がされてしまった。
(理由:ラビはレティシアに見つめられるとドキドキしてしまうので直視できない)
「まぁそうだけど…だってレティシアって十年前にここから出て行ったんしょ?
でも今のレティシアって20歳くらいに見えっし。つまりは10歳くらいの子どもの時に出て行ったことになる」
「そうね」
「…レティシアは何歳なんさ?その容姿で30歳とかじゃないよな?」
恐る恐る聞いてみる。
もしこの容姿で30歳くらいであれば年齢詐欺だと言っても過言ではないだろう。
もちろん、30歳であってもラビのストライクゾーンなのだが。
(40歳までオレはいけるから!)
「違うわ」
あっさりと否定されてホッとするのと同時に気になるのは本当の年齢。
「じゃ、何歳なんさ!?」とワクワクしながら聞いてみるとレティシアは興味なさそうに「忘れちゃった。何歳か、なんて」と答えた。
何歳か忘れた、なんて恐らく誤魔化すための言葉だろう。
自分の年齢を忘れるなんて長く生きすぎてわからない、という場合のみだろう。
レティシアの場合そんなことはありえないのだから、誤魔化しているとしか思えなかった。
「なぁなぁ、誤魔化さずに教えてさー」
「…秘密」
「えー!!??嫌さー!教えてくれさー!」
ぶーぶー言うラビにレティシアはクスッと大人の笑みを浮かべた。
「いい女に秘密は必要十分条件なのよ」
じゃぁね、とウィンクして食堂を出て行く。
ラビは艶やかな笑顔に顔を赤くしながらぼぉっと見惚れてしまった。
でも出て行ったことに気づくとはっと意識を取り戻し、ぼそっと呟いた。
「…いい女…」
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